把瑠都、弟の夫役に「みんな同じ人間」やさしさに隠れたつらい過去
漫画家・田亀源五郎の同名コミックを原作としたドラマ「弟の夫」。LGBTをテーマに、主人公・折口弥一(佐藤隆太)と、その娘、弥一の亡き弟の夫であるカナダ人マイク・フラナガン(把瑠都)の不思議な「家族」の形を描く本作について、佐藤と把瑠都が考えを語った。
LGBTとは、レズビアン(女性同性愛者)、ゲイ(男性同性愛者)、バイセクシャル(両性愛者)、トランスジェンダー(出生時の性に違和感を自認する性別越境者)の頭文字をとったセクシャルマイノリティの総称のひとつ。把瑠都演じるマイクは、その中のゲイという設定だ。
ヨーロッパ・エストニア出身の把瑠都は、ご存じ元大相撲力士。今回、連続ドラマ初出演となるが、ゲイ役を務めるにあたり、出身地ではちょっとした話題になったそう。つまりそれほどLGBTに関して、「エストニアは厳しいのです。(ゲイやトランスジェンダーの人が)テレビにも出ているし、日本はエストニアよりかなりオープンだと思います」と明かす。「カミングアウトするのはすごく大変」な土地柄で育ち、自身もその体格のよさから「意外に思われるかもしれないけど、ものすごくいじめられた」過去があるとも。そのためか、マイノリティーの気持ちはよくわかるのだろう、把瑠都のやさしくておだやかな性格は、力士時代から知られている。「僕の考えはシンプルなんです。みんな同じ人間で、好き嫌いだけが違う。ただ、いじめは許さない」ときっぱり。結局、LGBTというくくり自体が、把瑠都にはナンセンスなのかもしれない。
一方、弥一という役は、ゲイの弟を受け入れる側の立場になるが、佐藤は「自問自答するきっかけになった」と振り返る。「自分の周りにも同性愛者はいて、その人と向き合う
時に、自分では普通に振舞っているけど、どこかで傷つけているかもしれない」と感じたそうで、「自分の子供(娘)が、将来同性を好きになったら」と考えるまでに至ったとい
う。そのうえで「カミングアウトするには勇気がいるけど、子供がそのことをひとりで抱え込まないで、相談できる環境でありたいですね。他人の目線よりも、子どもがどうすれ
ば幸せを感じるのか、家族がのびのびといられるようにしたい」と思いを伝えた。
こうした繊細なテーマを扱いながらも、撮影現場は「お互いリラックスする雰囲気でできた」と佐藤。撮影に使われた一軒家は、築約90年の趣のある家屋で、「『家族』というテーマを扱う上でとても恵まれた環境でした」と一見不思議な「家族」の姿を描けたことに佐藤は満足げな様子を見せた。さらに佐藤が、把瑠都を「いろいろなところに意識が高い方」と称すると、反対に把瑠都は佐藤を「変なプライドを持っていない。偉くなると周りを見なくなっちゃう人もいるけど、佐藤さんはずっと変わらない」とべた褒め。神社で参拝するシーンが実は撮り直しになったのを佐藤が告白するなど、全員が相思相愛の中、撮影が進められた様子が伝わってきた。ちなみに、そのシーンが撮り直しになったのは、把瑠都が拍手(かしわで)を打つ演技が上手すぎたのが理由。「めずらしいですよね」と佐藤は笑いながら把瑠都の上手さを表すエピソードを披露していた。
ドラマ「弟の夫」はBSプレミアムにて本日3月4日(日)22時より放送(全3回)