吉永小百合、映画は大切な子供 120本目映画初日に「受験生の母親の気分」
女優・吉永小百合が10日、都内で行われた映画『北の桜守』の初日舞台あいさつに、共演の堺雅人、篠原涼子、岸部一徳、阿部寛、佐藤浩市、メガホンを取った滝田洋二郎監督と共に登壇。本作が出演映画120本目の節目となる吉永は「(自分には)実際の子供がおりませんので、映画は私にとって『子供』です。自分の子供だと思って、これからも、1本1本、大事にしていきたい」と出演作に込めた思いを明かした。
1959年に『朝を呼ぶ口笛』で映画デビューして以来、日本映画を代表する女優として活躍を続ける吉永だが、公開初日は「やはり心配」と話し「(本作が)ご覧になったお客さまにどのように受け止められるか、昨夜は眠れませんでした。今日は受験生の母親になったような気持ちです」と若々しい笑顔で会場に語りかけた。
北海道の厳しく豊かな自然に生きる人々の人間模様を、吉永主演で描いた『北の零年』(2005)『北のカナリアたち』(2012)に続く“北の三部作”の最終章となる本作。終戦間近の1945年、ソ連の侵攻によって家族と暮らしていた樺太を追われ、命からがら北海道の網走に逃げ延びた江蓮てつ(吉永)と息子・修二郎(堺)を中心に、戦中・戦後の激動の時代を生きた親子の30年にわたる物語を描き出す。
実写映画では吉永と初共演となった堺が、撮影について「吉永さんは、シーンごとにいろいろな顔をなさっていて、ひとときも同じところがない。見つめ合うだけで、スーッと引き込まれてしまって、母子と考えない方が、むしろいいのではと思った」といい「初夏の爽やかな北海道を吉永さんと楽しい旅行をさせていただき、得した気分です」と振り返ると、吉永も「いえいえ、それは逆で、私が堺さんの演技に見惚れていたんです」と息のあったやり取りを披露。
『おくりびと』で知られ、吉永と初タッグを組んだ滝田監督も「30代から60代までを演じた吉永さんは、30代は美しく気丈に、60代では大切な思い出を胸に秘めた女性をじっくりと演じていただいた。吉永さんの120本目(出演作)にふさわしい作品になったと思います」と自信を口に。最後に吉永は「明日の3月11日で、大震災から7年になります。今も苦しんでいる方がたくさんいらっしゃる中、73年前に樺太で実際に起こった出来事を元にしたこの映画を、今日観ていただくことに、心から感謝します」と熱いメッセージを送っていた。(取材/岸田智)
映画『北の桜守』は全国公開中