ナタリー・ポートマンの話題作も!今、NetflixのSFが面白い
映画『エクス・マキナ』のアレックス・ガーランド監督が、ナタリー・ポートマンを主演に迎え、ジェフ・ヴァンダミアのベストセラー「全滅領域」の映画化に挑戦した『アナイアレイション -全滅領域-』がついに3月12日配信スタート。この作品を筆頭に、この頃、NetflixのSF作品が盛り上がっている。
美しくも危険な領域…『アナイアレイション -全滅領域-』予告編
『アナイアレイション -全滅領域-』が注目を集めているのは、まず監督が、SFファンに絶賛された『エクス・マキナ』のアレックス・ガーランドだから。『エクス・マキナ』は、人間と同じ外見の身体を持つ人工知能エヴァを『リリーのすべて』のアリシア・ヴィキャンデルが演じたSF心理ドラマ。主な登場人物は3人、舞台は人里離れた建物の中、という最小要素での構成、植物と人工物を対比させたビジュアル感覚が評価された。
そして本作の原作「全滅領域」は、2015年のネヴュラ賞を受賞したSFファンの人気作。“サザーン・リーチ”三部作の第一作だが、ガーランド監督はこの第一作だけを原作にしたと語っている。ストーリーは、世界に謎の領域が出現、生物学者や心理学者など女性研究者たちが調査に向かい、未知の存在を感知する、というもの。この設定だけでも、女性言語学者が地球外生物と接触する名作SF映画『メッセージ』(2016)や、謎の領域に踏み入るアンドレイ・タルコフスキーの名作SF映画『ストーカー』(1979)を連想させる作品だ。
しかも原作小説には、未知の存在の正体をめぐる謎解き、世界の変容の様相、主人公の心理の変化など、さまざまな要素があるので、ガーランド監督がどの部分に焦点を当てて描くのかも興味深いところ。また、監督のビジュアルセンスが、世界がまったく異質なものに変化していくさまをどのように映像化するのかも気になる。監督と原作、この両方がSFファンの興味をそそる作品なのだ。
本作以外にもNetflixでは、昨年、名作SF映画の続編『ブレードランナー 2049』が公開されたからか、まるで“ブレードランナーの街”を描いたかのような作品が2作配信されている。
一つは全10話の「オルタード・カーボン」。27世紀、人間の人格記憶の保存・移植が可能になった世界。元特殊部隊員タケシ・コヴァッチが、大富豪に雇われて彼自身の殺人未遂事件を捜査する中で、その背後の意外な事実を見つけていく。このドラマの27世紀のロサンゼルスの街が、かなり『ブレードランナー』らしい。原作の英国作家リチャード・モーガンによる同名小説は、2004年の『ブレードランナー』の原作者を記念して創設されたSF文学賞、フィリップ・K・ディック賞の受賞作。近未来ハードボイルドというジャンルも『ブレードランナー』と同じなので、似ているのも無理はない?
主演はドラマ「THE KILLING ~闇に眠る美少女」のジョエル・キナマン。『ロボコップ』『スーサイド・スクワッド』では精彩がなかったが、本作ではプロポーションの良さを活かした場面が多く、クールな魅力を発揮。番組クリエイターは女性で、『アリタ:バトル・エンジェル』『シャッター・アイランド』の脚本家レータ・カログリディスが務めている。
もう一つの“ブレードランナーの街”は、ダンカン・ジョーンズ監督の最新作『Mute/ミュート』の近未来のベルリン。主人公は、『ターザン:REBORN』のアレキサンダー・スカルスガルド演じる、幼い頃の事故で声を失い今は酒場でバーテンダーをするレオ。恋人ナディーラが行方不明になり、彼女を探して犯罪社会の闇の中を彷徨う。
デヴィッド・ボウイの息子、ジョーンズ監督は自ら認めるSF映画ファンで、これまでも『月に囚われた男』(2009)、『ミッション:8ミニッツ』(2011)とSFファンらしい映画を監督してきた。その彼が原案と共同脚本も務めた新作の街が、『ブレードランナー』の街によく似ているのは、この映画の大ファンだから? ちなみに本作の時代設定は『月に囚われた男』と同じで、作品中にちょっとしたリンクがある。
そして、人気SFシリーズ最新作『クローバーフィールド・パラドックス』も配信中。このシリーズといえば、巨大モンスターのパニック映画『クローバーフィールド/HAKAISHA』(2008)の続編『10 クローバーフィールド・レーン』(2016)が、前作とはまったく違うジャンルの作品なのも話題を集めたが、それに続く本作もまた別ジャンル。今回の舞台は宇宙ステーション。科学実験が元で、奇妙な現象が起きる。本作がなぜこのシリーズなのかは、見てのお楽しみだ。
監督は『トラブルメーカー』(日本未公開)のジュリアス・オナー。群像劇で、ダニエル・ブリュール、チャン・ツィイー、ググ・ンバータ=ロー、デヴィッド・オイェロウォら人気俳優が共演している。
また、米英以外のSF作品も配信されているので要チェック。ドイツ製作のテレビシリーズ「ダーク」は、シーズン1全10話が配信され、シーズン2が楽しみなところ。冒頭は、一人の少年が行方不明になって小さな町中に波紋が起き……とサスペンスかと思わせておいて、一気に時間SFに。4つの家族、3世代の登場人物たちが、現代と過去、時間が交錯する中で描かれていく。今より少し前の時代も舞台になるところや、少年少女が事件に巻き込まれる点など、人気シリーズ「ストレンジャー・シングス 未知の世界」を連想させるところにも注目だ。
これらのNetflix配信作は、劇場公開作のようにポスターやチラシを目にすることはほとんどないが、ネットにはニュースや予告編がある。映像ファンは配信作からも目が離せない。(平沢薫)