ジャレッド・レトー、日本が大好きに!「日本での仕事は夢のよう」
終戦後の大阪を舞台に、囚われの身から解放された元米兵が極道としての人生を歩み始めるさまを描いたNetflix映画『アウトサイダー』で、浅野忠信、椎名桔平、忽那汐里、大森南朋、田中泯らと共演した主演俳優のジャレッド・レトーと、メガホンを取ったマルティン・サンフィリート監督が、オール日本ロケで行われた撮影や本作でのこだわりについて語った。
本作でヤクザの世界に身を投じることになる元米兵ニックを演じたジャレッドは、「ヤクザ映画はよく知っていましたし、好きでよく観ていました。というより、ジャンルを問わず日本映画の大ファンでしたから。映画監督として黒澤明に大きく影響を受けましたし、『醉いどれ天使』は特に素晴らしく、その他に『乱』などの映画に感銘を受けました」と日本映画への愛を語り出す。日本人キャストとの共演についても「彼らは技術と才能に秀でており、見ていて学ぶことが多かったです。周りが言っているセリフの意味がほとんど、あるいはまったく分からないというのは今までにない経験でしたが、役者の感情表現やボディーランゲージを通して何が起こっているのかを感じ取ることができました」と太鼓判。
一方、監督が「スティーヴン・セガールのようにいかにも強そうな男よりも、何を考えているのかわからない男のほうがこのストーリーにはふさわしいと思ったんです」とジャレッドの起用について語っていたように、ジャレッドふんするニックが醸し出す静けさは、彼を取り囲む日本人ヤクザと明らかな対比をなしている。ジャレッドと監督は、ニックという人物を理解するうえで、心的外傷後ストレス障害 (PTSD)と、第2次世界大戦後という時代背景についてのリサーチを重ねたという。「ニックは恐ろしい経験を切り抜けて生き延び、戦争は過去のものになりました。しかし彼はPTSDを患い、アメリカという母国、そして故郷の家族との関わりを絶ちます。過去の自分と現在の自分の繋がりが実感できずに、困惑しながら自分自身を探しています。そんな状況で日本人に囲まれ暮らし、彼はそこを自分の居場所と感じ始め、日本の地で『家族とは何か』『故郷とは何か』を理解し直し、映画の冒頭ではなんの帰属意識もなかった彼が、最後には第二の故郷と新しい家族を見つけるのです」とジャレッドは説明する。
また、オール日本ロケで撮影された映像の美しさは、本作の魅力の一つでもある。監督も日本を美しく描くということには最初からこだわっていたそうで、「1950年代の日本を白黒写真で見ることはできます。でも、実際にはどんなに鮮やかだったのか、興味をそそられました。そして、日本はすべてをもっています。美しさも、その残酷な面も。例えば、うす暗い路地があったかと思えば、神聖な寺なんかもあるわけです。そういった要素をこの映画で美しく描きたいと思いました」と明かす。そして、景観だけではなく、ヤクザのビジュアルにも気を使ったそうで「誰かが教えてくれたのですが、日本ではみなヤクザを恐れているけど、でもどこか憧れているところもあると。なぜなら彼らが自由だからです。なので、ヤクザを美化するわけではないのですが、最高にクールなヤクザ映画を目指していました。暴力とスタイルはときに密接に結びついていて、日本のヤクザをはじめ、一般的に、ギャングスターたちは、身なりにかなり気を使っていますから」と監督は指摘していた。
最後に、ジャレッドは日本ロケを振り返り、「日本での仕事は夢のようでした。人、文化、歴史、食、アート、建築、伝統、どれを取っても素晴らしかったです。撮影では福岡から北九州、大阪、東京と回って、ものすごい冒険で、本当に日本のファンになりました」と満足げ。「日本での撮影の間、温かく歓迎してくださり感謝しています。日本の文化は美しく、人々の優しさ、勤勉さ、そして世界一美味しい食事に感激しました。本当にありがとうございました」と感謝の言葉を口にしていた。(編集部・石神恵美子)
映画『アウトサイダー』はNetflixにて配信中