渡辺謙&大沢たかお、ミュージカル聖地・英ウエストエンドで初共演!
ニューヨーク・ブロードウェイで人気を博したミュージカル「王様と私」で王様役を務めた俳優の渡辺謙が、ミュージカルの二大聖地と称されるロンドンのウエストエンドに進出し、新キャストとしてクララホム首相役に決まった大沢たかおと初共演を果たす。ウエストエンドでの公演を前に、渡辺と大沢が作品に懸ける熱い思いを語った。
ミュージカル「王様と私」は、1860年代のシャム(現タイ・バンコク)が舞台。王様に西欧式の教育を受けさせるために、首相クララホムに連れられてきたイギリスの未亡人アンナと王様が、東洋と西洋の文化の違いから対立しながらも、心を通わせ絆を深めていく様子が描かれる。渡辺は2015年、ニューヨーク・ブロードウェイ公演で王様役として出演すると、トニー賞ミュージカル部門主演男優賞にノミネートされた。
渡辺、大沢ともに俳優としてのキャリアは長いが、本作が初共演となる。渡辺は「仕事は初めてなのですが、トレーナーが同じでメンタリティーの共有などはできていたんです」と意外な接点を明かすと「僕のニューヨークの『王様と私』の公演のとき、大沢くんが観に来てくれて、そのとき演出家と顔合わせをしたんです」と、大沢と本作との最初の出会いを述懐する。
大沢も「個人的に謙さんの公演をニューヨークまで観に行ったら、いきなり呼び出されて、翌日から2~3日、本番公演がやっている裏で、予告なく、発声や歌などオーディションのようなことがあったんです」と切り出し、「その後、一度日本に帰ってからも、再度呼び出されてニューヨークに行ったりしていました。結局そのときは、縁がなかったのですが、昨年の夏ぐらいに『イギリスのウエストエンドで再度公演があるのでどうですか』と言われました。以前のリベンジをしたいという気持ちもあったし、半分乗りかかった船だったので、今回参加させていただきました」といきさつを語る。
渡辺を介して結ばれた大沢と「王様と私」だが、大沢にとって渡辺の存在は出会ったときから衝撃的だったという。「12~13年ぐらい前に始めて謙さんとすれ違ったことがあったんです。そのときあいさつをさせていただいたら、謙さんが『海外にいつ来るの?』と話かけてくれて電話番号を書いた紙を渡されたんです」と当時を振り返る。
こうした声がけをした理由を、渡辺は「それぞれの人生もあるし、海外で仕事をすることが、これっぽっちも偉いなんて思っていませんが」と前置きしつつも「でもキャリアを白紙に戻して、自分になにができるかを試すという意味で、海外で仕事をするのはすごくいいチャンスだと思うんです。特にキャリアも実力もあるのだから、チャレンジしてほしいという気持ちが強かったんです」と熱く語る。
続けて渡辺は「以前『ファントム』で大沢くんの舞台をはじめて観たのですが、普段と変わらず誠実なお芝居をする人だなという印象があったんです。いくらハッタリをかましても、その人の“生”のものは芝居を通して見えてくる。その意味で本当に誠実な人柄なんだろうなと思った」と大沢の魅力を語ると、今回共演することに「僕がニューヨークでやってきたことがフロック(思わぬ幸運)ではなく、日本の俳優はしっかりとしたポテンシャルを持っているんだと証明できるいい機会だと思うし、彼の勇気にも感謝したい。日本の俳優同士として、ウエストエンドの舞台に立てるのはすごく誇らしい」とエールを贈る。
大沢も「僕が舞台デビューしたのは、蜷川幸雄さん『夏の夜の夢』だったのですが、そのときイギリス公演を行なったんです。とてもお客さんのレベルが高く厳しい場所だなという印象があったのですが、またそこで自分の実力を試すことができるのはありがたいし、やりがいを感じます」と意気込みを語った。
本作は全編英語での公演となるが、渡辺は「日常の会話と、舞台でセリフとして話す英語はまったく違う。僕も一からやり直す感じ」とアドバイスを送ると、大沢も「舞台では“声”が大切なのですが、それが今回は全編英語。それに費やす時間とエネルギーは、他の作品とは大きく違う。僕もしっかり準備をして臨みたい」と気を引き締めていた。(磯部正和)
ミュージカル「王様と私」は6月21日からプレビュー、7月3日~9月29日まで英ロンドンのパラディウム劇場にて上映