『マイ・インターン』のナンシー・マイヤーズ監督、自身のキャリアを振り返る
映画『ハート・オブ・ウーマン』『マイ・インターン』などのナンシー・マイヤーズ監督が、トライベッカ・フェスティバル・ハブで行われたトライベッカ映画祭が開催するトーク・イベントで、4月25日(現地時間)、自身のキャリアについて振り返った。
【作品写真】名優ジャック・ニコルソンをも唸らせた映画『恋愛適齢期』より
1980年に映画『プライベート・ベンジャミン』でアカデミー賞脚本賞にノミネートされ、1998年に『ファミリー・ゲーム/双子の天使』で映画監督デビューしたマイヤーズ監督。2000年にはメル・ギブソン主演の映画『ハート・オブ・ウーマン』が全米興行収入の記録を樹立し、昨年『ワンダーウーマン』に記録を破られるまで、全米で最も興行的に成功を収めた女性監督だった。
ストーリーエディター(脚本家に助言して共に台本を作る人物)として働いた後、『プライベート・ベンジャミン』で初めて長編映画の脚本を執筆した。「ある時、夫が急死した女性が軍隊に入ったら、というアイデアを思いついたの。そこで、当時一緒に住んでいたチャールズ・シャイア(後の夫)や当時パイロット番組を手掛けていたハーヴェイ・ミラーと共に脚本を書いたのよ。でも、この脚本をスタジオに送ったら、『(フェミニストな作品で、軍隊を否定していることから)この映画を作れば、君のキャリアは終わるよ!』と、どのスタジオからも製作を断られたわ」と明かす。その後、自身らで製作した同作で、アカデミー賞脚本賞にノミネートされた。
コメディーが難しいとされる理由については、「『恋愛適齢期』の時にジャック(・ニコルソン)が、『きっちり笑わせなければいけないコメディーは、本当に難しいね。もし、面白くなければ誰も笑わない。でもドラマならば、たとえ完璧に演じられなくても、良いシーンになることはある』と言ってきたことがあったの。わたし自身も、コメディーを完璧にできるのは本当に一握りの人たちだと思っていて、だからコメディーができる俳優は頻繁に出演したりするけれど、ドラマの俳優はそれができずに10年間で4、5本の作品しかできなかったりもする。もしドラマの俳優がコメディーに出演したくても、あまりコメディーでは見たくない俳優もいるわ」と数多くのコメディー作品を手掛けてきた彼女らしい持論を展開した。
脚本家としては早くから成功していたが、監督としてデビューしたのは49歳と遅咲きとなった理由については、「子育てがあったからよ。監督として関わるのは、製作者として関わるよりも時間が掛かるの。だから最初に監督したのは、次女が10歳くらいの時で、その年になれば、もう大丈夫だろうと思ったのだけど、結局、姉妹二人とも出演していたわ。彼らと離れるのが嫌だったのよ」とマイヤーズ監督。
長年、製作兼脚本のパートナーだった夫・チャールズと別れて手掛けた、『ハート・オブ・ウーマン』については、「それまでのわたしたちの作品は、共同で製作していたわりに、なぜかわたしがこなしていた仕事の方が多かった気がするの。自分の意思を脚本に含めたくて、いつも脚本を改稿することから始まっていたのよね。(初めて別の脚本家と組んだ)『ハート・オブ・ウーマン』でも、同じように脚本の改稿から始めようとしたら、結局メガホンを取ることになったのよ」と振り返った。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)