森山未來、役名ないまま現場へ 初の河瀬組に「催眠術にかけられたよう」
俳優、ダンサーの森山未來が17日、都内で行われた映画『Vision』(6月8日公開)完成披露イベントで、初参加となった河瀬組での刺激的な体験を振り返った。台本も半分だけで、役名も決まっていないまま「とりあえず(撮影場所の奈良県の)吉野に来てと言われた」と驚愕の事実を明かす一幕もあり、客席を沸かせていた。イベントには、永瀬正敏、岩田剛典、夏木マリ、美波、河瀬直美監督が登壇した。
本作は、カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞した『殯(もがり)の森』などを手掛けた河瀬監督の長編劇映画10作目。薬草の一種で幻の植物と呼ばれる「Vision」を探すフランス人エッセイスト・ジャンヌ(ジュリエット・ビノシュ)が、奈良・吉野の森で山守の男・智(永瀬)と出会ったことにより起こる数奇な出来事を描く。
これまでも「河瀬監督の演出方法は独特」と出演俳優が口にすることは多かったが、前述したように、森山は何も決まっていないまま現場に入り、河瀬監督と話をするなかで「岳という役をやろうか」と配役が決まっていったという。そんな河瀬監督の手法に森山は「攻め具合が好きだなと思った」と胸の内を明かし、「森を歩いてみようか」と言われただけなのに、すでにカメラで撮られていたことにも驚いたそうだ。
森山の撮影はわずか3日間だったというが、「河瀬監督の周囲を巻き込んでいく呪術師のようなニュアンスが良かった。まるで催眠術にかけられたようで、撮影が終わって帰るときも、幻覚を見ているようだった」と河瀬ワールドにどっぷり浸かったことを明かしていた。
この日のイベントでは、河瀬監督が突然「共演したビノシュのどこに惹かれたのか」と本作で永瀬とともにダブル主演を務めたフランスの名女優ジュリエット・ビノシュにまつわる質問を男性陣にぶつけると、森山は「直感的なもの。そこには理由があるわけでもなく、理性は働きつつも、獣同士のような本能として惹かれた感じがした。言うならば匂いのようなもの」と説明する。続けて「河瀬さんと近い感覚かな」と付け足すと、河瀬監督は「それってわたしに惹かれているってこと?」とツッコミ。森山は「いや、キャラクターみたいなものとして……」と補足するも、河瀬監督から「いや、ってどういうこと!」とさらにツッコまれてタジタジになっていた。
本作の初号試写を見た森山は「吉野の山の密度の濃いなかに生きる、地に足のついた人たちが描かれているのに、ある種、吉野の山に眠っていた神話みたいなものを感じることができる素敵な映画だと思いました」と感想を述べ、「この作品に携われてうれしかったです」と笑顔を浮かべていた。(磯部正和)