高畑勲監督『かぐや姫の物語』で描いた過去と未来 金ローで今夜
故・高畑勲さんの遺作『かぐや姫の物語』が、今夜「金曜ロードSHOW!」(日本テレビ系、夜9時~)で放送される。高畑監督が同作を製作する上で注目したのは、誰もが知る物語の過去と未来の部分だった。
平安時代から語りつがれてきた「竹取物語」を映画化した本作。竹から生まれたかぐや姫が、美しく成長して月に帰るというストーリーを高畑監督が再解釈し、8年の歳月をかけて完成させた。
高畑監督は、同作の企画段階で「かぐや姫が月で犯した罪とはどんな罪だったのか」と疑問を抱いたことが製作のきっかけだったことを明かしている。かぐや姫が地上に来た理由や、かぐや姫が罪を許されて月に戻れたのはなぜなのか。高畑監督は描かれていない過去と未来をふくめた「かぐや姫のほんとうの物語」を探り当てようとしていた。
かぐや姫がどんな人物なのかを表現するために、高畑監督はスタジオジブリに第7スタジオという新しいスタジオを開設し、「アニメを超えるアニメ」に挑戦した。従来のアニメーションは、背景とその手前の人物などを別々に描いて動きをつけるセルアニメーションという手法が採用されている。しかし、本作では背景とキャラクターを一緒に描き、1枚の絵が動いているような生きたアニメーションに仕上げた。
ほかにも、同作ではアニメーションを先につくってその動きに声を合わせるのではなく、先に声を録るプレスコ(プレスコアリング)という方法を採用。そのため、映画が公開される1年前の2012年に亡くなった地井武男さんの翁役での声の出演が実現している。
今回の放送に際して、プロデューサーを務めた西村義明は「8年間という長期の製作期間を経て完成した映画ですが、ジブリ第7スタジオのスタッフたちとともに、とても楽しそうに映画を作っていた高畑監督を思い出します」というコメントを寄せている。(編集部・梅山富美子)