ジョン・キャメロン・ミッチェル監督、『パーティで女の子に話しかけるには』原作者とのタッグを語る
映画『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』『ラビット・ホール』のジョン・キャメロン・ミッチェル監督が、これからアメリカ公開される『パーティで女の子に話しかけるには』(日本では昨年12月に世界最速公開)について、主演俳優のアレックス・シャープと共に、5月22日(現地時間)、ニューヨークのAOL開催イベントで語った。
本作は1977年のロンドン郊外が舞台。パンクバンドに憧れる内気な少年エン(アレックス)は偶然もぐりこんだパーティーで美少女ザン(エル・ファニング)と出会い、音楽やパンクファッションの話で盛り上がり、恋に落ちる。しかし、遠い惑星に戻らなければいけない彼女と過ごせる時間はわずか48時間のみ。大人たちが押し付けるルールに反発した彼らは、一緒にいるために逃避行するが……。ニール・ゲイマンの短編小説を映画化した。
ニール・ゲイマンとのタッグについて、ミッチェル監督は「映画『ショートバス』を製作したハワード・ガートラーが、ニールの短編を読んで、これは映画にできると思ったらしいんだ。彼はその版権を手にしたんだけど、ニールは自分の作品が大げさに誇張され、原作の持つ魅力を失ってしまったことに、少々嫌気がさしていたみたいだったんだ。だから、今作の基になった短編に対しても、『地に足のついた映画製作を望むし、制作費のかかる大作のような作品にはしたくない』と言っていてね。そこで、もう一人の脚本家フィリッパ・ゴスレットとニールがトリートメント(物語の概要)を書いて、僕が後日加わったというわけさ」と経緯を明かし、続けて「僕自身は、自分のテイクのストーリー構成をやろうと思って、彼らに加わることをためらっていたんだけど、素晴らしい短編であったし、その内容から多くの文脈に書かれていないことが推測できて、3人でも(脚本を手掛ける上で)良い時間が過ごせると思い直したんだ」と語った。デザイン、音楽、哲学には特にこだわりを見せたそうだ。
パンクの世界について主演のアレックスは、「当初はパンクに関しては、わずかなことしか知らなかったけど、今作に関わったことで知識を高めることができたね。パンクの起源となった音楽は、多くの音楽に影響を与え、現在のパンクはオリジナルのパンクとは異なった形態になっている。僕のキャラクター、エンは、必死にパンクの世界の人になろうとしているが、あまり上手くいっていない状態だよ。でも挑戦はしている役どころだから、パンクの世界観は演じる前に深く掘り下げて学んだんだ」と語った。撮影前には、ミッチェル監督からThe Roxy Club(クラブ)の歴史を記した本を薦められて読んだそうだ。
エル・ファニングとの共演については、「彼女はスウィートな女性であるだけでなく、(キャリアも長く)熟練したプロでもあるよね。少し陳腐な褒め言葉になるかもしれないけど、とても愛嬌(あいきょう)があって、礼儀正しい、友人でもあり、この上ない才能も兼ね備えている。完璧な人物だったよ。今も、素晴らしいキャリアを形成していて、彼女と共演できたのは、信じられないくらい楽しいものだったんだ!」とアレックス。ミッチェル監督も「(撮影中)あまりに二人が楽しんでいるから、笑うのをやめなさいと注意したくらいだったよ(笑)」と明かし、和やかな雰囲気の現場だったことがうかがわせた。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)