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『コード・ブルー』のブレない軸!ヒーロー物語にしないこと

ドラマから劇場版へ
ドラマから劇場版へ - (C) 2018「劇場版コード・ブルー-ドクターヘリ緊急救命-」製作委員会

 昨年12月、報道陣に向けて公開された『劇場版 コード・ブルー-ドクターヘリ緊急救命-』(7月27日公開)の撮影現場で、増本淳プロデューサーが10年続いてきた『コード・ブルー』シリーズの軸となる考えを明かした。

『劇場版 コード・ブルー-ドクターヘリ緊急救命-』予告

 同作は、救急用のドクターヘリに乗り込むフライトドクターの成長と医療現場のリアルを描く。医療をテーマにしたドラマや映画は多く存在するが『コード・ブルー』には、いくつかのブレない軸があるという。増本プロデューサーは、「メインの5人、ないしはフライトドクターチームの11人の医者で世界を救うことはできないし、日本の医療を変えることもできない。救えるのは目の前にいる数人、しかもそれだって助からない命もある。この部分は大切にしていたことの一つです」と語る。

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 つまり、絶体絶命のピンチでも彼らが登場することによって奇跡が起きる……というストーリーにはしないということだ。それは増本プロデューサーの経験からくるものだった。「僕は以前、『Dr.コトー診療所』や『救命病棟24時』シリーズなど、ある種ファンタジックなスーパードクターが、シビアな状況を解決するヒーロー物語を描いてきました。もちろんこういったジャンルが好きな人もいるし、需要があることも理解しています」。

 それでも「コード・ブルー」で描こうとしたものは、ヒーロー物語ではなかった。「こういった作品に対するカウンター的な物語にしようという思いが企画の出発点でした。ドクターヘリのすばらしさを伝えることがドラマのポイントではありますが、だからといってドクターヘリが飛んだら、絶対助かるというような話にはしないというのが、これまでのシリーズに共通する考え方です」と一貫して通してきたコンセプトを述べる。

 こうした考えは映画でも踏襲されているという。増本プロデューサーは「とかく映画だと、ヒーローものに行きたくなります。特に大惨事で、たくさんの負傷者が出て、主人公たちが大活躍する展開。やりたくなってしまうけれど、そこは『コード・ブルー』らしさを貫いています」と強調する。

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 しかし、こうした結論に至るまで、増本プロデューサーは、主演の山下智久らキャストたちと議論を重ねた。そのなかで論点となった部分の一つが、シリーズを通して『コード・ブルー』がフライトドクターたちの生活の一部を切りとったような作りをしてきたことだった。「『コード・ブルー』は、あえて明確なテーマを設けないようにしていました。メインの5人の日常をのぞき見しているような、日記のような物語づくりを心がけてきました。だからこそ、こうして長く続くシリーズになったのだと思います。派手で明確なテーマを設定すると、そこで完結してしまいますから。でも映画は、撮影規模も観賞形態も違う。同じことをやっていいのかという意見は出ました」。

 実際、こうした話し合いのなか、山下は「映画用のストーリー展開に基づくキャラクターの微妙な違いはあってもいいのでは」と当初は思っていたという。例として『ドラえもん』に登場するジャイアンは、テレビアニメでは少し意地悪なキャラクターだが、映画では勇敢ないい少年に変わるということも挙げられて、熱い議論が展開した。大いなる意見交換のもと、最終的には「『コード・ブルー』は『コード・ブルー』だよね」というかたちで方向性は決まったという。

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 「各シーズンに1回は大規模災害を取り上げていますが、劇場版では、これまで描いたことがなかった海難救助を扱っています。海ほたるでのロケも行うことができ、『コード・ブルー』らしさは踏襲しつつも、スケールはとても大きな作品になっています」と増本プロデューサーは自信をのぞかせる。

 「連続ドラマは夜9時の放送だったので、終了後、寝る前にいろいろと考えてもらえるような、やや重い感じを残す作りをしていましたが、映画は、優しい余韻に浸れるようなエピソードに挑戦しています」と語った増本プロデューサー。撮影では、急きょ台本にない『コード・ブルー』ならではの、シーズンを重ねたからこそできた、ファンにはたまらないシーンも追加されたという。(取材・文:磯部正和)

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