刑事弁護士の困難と苦悩を描き注目のドキュメンタリー、弁護士らが語る
極悪犯罪者と刑事弁護士の法廷での関係を描いた話題のドキュメンタリーシリーズ「イン・ディフェンス・オブ(原題) / In Defense of」について、刑事弁護士のクリス・テリティコ氏、ダン・コグデル氏、ジョン・ヘンリー・ブラウン氏が、6月19日(現地時間)、ニューヨークのAOL開催イベントで語った。
本作は、全米を騒然とさせた猟奇的殺人事件を起こしたテッド・バンディ(30人以上の若い女性を殺害したシリアルキラー)、ティモシー・マクベイ(オクラホマシティ連邦政府ビル爆破事件の主犯)、ジョディ・アリアス(元恋人の顔を銃で撃ち、喉を切り裂き、30か所近く刺した女性)ら極悪犯罪者と、彼らを法廷で弁護した刑事弁護士の困難と苦悩を描いたもの。NBC Universalの傘下にあるOxygen Mediaが手掛けた。
テレビなどで刑事事件が描かれる場合、一般的に、被告人を悪魔のように扱い、検察側をたたえるように描かれていることが多い。そう語るのは、ティモシー・マクベイの弁護をしたテリティコ氏だ。「このような番組ができるのをずっと待っていたよ。刑事弁護側を掘り下げて、僕ら弁護士がいかなる仕事をして、(その裁判に関わったことで)どのような影響をもたらすかを描いている作品は見たことがなかったんだ」。
ブランチ・ダビディアン事件(新興宗教団体の集団自殺事件)を扱ったコグデル氏は、レストランで見知らぬ人々から唾を吐かれたり、飲んでいたドリンクを投げつけられたりしたことがあったそうだが、「でも世間から嫌われている被告人を、客観的な観点から人々が学ぶことは重要だと思っているんだ」と本作への思いを明かした。また、連続殺人鬼テッド・バンディの弁護を務めたブラウン氏は、「この番組を観て一般の人々には、僕らのような刑事弁護士がいなければ、自由な社会を持つことはできないということを理解してほしいと思っているよ」とどんな人物であれ、法の下では公正に裁かれることを望んでいるという姿勢を見せた。
テリティコ氏は、担当したティモシー・マクベイについて、ビルを爆破し、168人もの人々を殺したことを擁護しているわけではないし、決してその行為を正当化しているわけでもないと主張する。「弁護側としては、被告人の権利が(司法制度において)守られているか確認することが大切なんだ。それは同時に、司法制度において被告人の犯罪を証明することになる。もしそれが証明できなければ、被告人が法廷の正面口から出て行くことになってしまうんだ」。同事件においては、最初からそれが証明されることは誰もがわかっていたと付け加えながらも、自身の妻と子供が人々の好奇の目にさらされることは懸念していたと明かした。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)