是枝監督、『万引き家族』撮影の裏側を語る
カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞した『万引き家族』のティーチインイベントが21日、TOHOシネマズ 六本木にて行われ是枝裕和監督が出席。ファンからの質問に答えながら撮影の裏側や作品に込めた思いなどを紹介した。
この日のイベントは英語字幕版の上映後に行われたこともあり、満席の会場には外国人の観客も多かった。最初の質問は映画をすでに4回も鑑賞したというファンの女性で、劇中に登場する家族が縁側で見えない花火を見上げるシーンについて、「6人全員がフレーム内に収まっているのはあのシーンだけなのでは? その理由はあるのでしょうか?」と是枝監督に問いかけた。
4回も観ていることに「早いですね!」と笑顔を見せていた是枝監督は、「(理由は)ないわけではないんですが、6人全員をフレーム内に収めるのはあのシーンだけにしようと思っていました」と回答。そして、該当のシーンは脚本の初期段階からあったわけではなく、ロケーションハンティングをしていた際のスタッフとの会話から生まれたことを紹介した。
続いて質問用のマイクを握ったのは鑑賞は2回目という外国人の男性ファン。パルムドール獲得を祝福したその男性からの「『家族』とはなんだと考えますか?」という質問には、福山雅治主演の『そして父になる』も引き合いに出しつつ答えた。
「家族とは何かという答えを出すために(映画を)撮っているのではなく、自分も家族とは何だろうなと考えながら撮っています。(本作の)登場人物たちも、そういった問いについて手探りで探しているんだと思います。『そして父になる』を撮った時は家族をつなぐのは『血なのか、時間なのか』という問いを立てて、どちらが重要ということではなく、二者択一を迫られた男の苦悩を描いたつもりです」。
「今回は共に過ごす時間が終わったあとに、記憶として残っているものが『家族』なのかなと。一緒に暮らすことができなくなってなお、(お互いに)つながっていると意識することの中に家族があるのではないか。見えない形で(家族というものが)たちあがってくる。そういう話にしたいなと思っていました」。
イベントが行われた21日は、今作に出演していた子役の1人である佐々木みゆの誕生日。終始おだやかな表情で観客との交流を楽しんでいた是枝監督はイベントの終盤で『万引き家族』のグループLINEがあることを明かし、佐々木の誕生日ということで出演者たちが盛り上がっていると話していた。(編集部・海江田宗)