インディーズ映画『愛∞コンタクト』2年越しのDVDパッケージ化への道
女優・加藤夏希が出演したオムニバス映画『愛∞コンタクト』のDVDが8月25日にリリースされる。2016年11月に劇場公開されてからソフト化まで約2年。一本のインディーズ映画がDVDパッケージ化にこぎつけるまでの経緯を、プロデューサーに聞いた。
三池崇史監督作品などへの出演で知られる女優・中原翔子が、早川ナオミ名義で映画を初プロデュース。代々木忠監督のエッセイ「つながる セックスが愛に変わるために」を原作に、誰ともつながれない、さまざまな立場にある女性たちを描いた3つのストーリーで構成されている。
初めてプロデューサーという立場で映画とかかわった中原は、初めてづくしのなか、体力を削りながら撮影に挑み、企画から3年を経て渋谷のユーロスペースで本作を公開。上映の応援にかけつける日々が続いた。1年間にわたり全国で順次上映されたが、そんな中原には、作品を形で残したいという強い思いがあり、体力の回復を待ってソフト化に動いた。
メジャー映画では、公開前からメーカーも決まっているのが常だが、インディーズの場合は、必ずしもそうではない。「1年前に公開が一段落し、そこから、本作に合いそうなメーカーを検討していきました。何社かイメージしつつ、状況を探っていった感じですね」
ただ、現在はDVDパッケージも“売れない時代”で、配信サービスという手も検討していたという。しかし、数多くの映像作品を販売するオールイン エンタテインメントが反応。加藤をはじめ、ベテラン俳優の寺島進、「仮面ライダーゴースト」の真山明大、声の出演に津田健次郎など豪華なキャストは、メーカーにとっても魅力的なコンテンツに違いない。
「何とかあきらめずここまで来られ、DVD化されることでまたお客様に観ていただくチャンスが巡ってきた。多くの方に観ていただけることが何よりの喜びです」
原作は、代々木忠監督の作品に出演した男女についてつづった書籍。中原は、書籍に登場する男女が他人には見えなかったという。「相手の目を見るという『形』に陥った女性、親との関係に苦しむ女性、虚勢を張る男性、自分の影と格闘する人々、全部私だと。そして、世の多くの男女にも当てはまるのではないかと感じました。その気づきが私を映画製作へと駆り立て、ここまで来られたことの原動力となっています。今も間違うこともあるし、迷うし、立ち止まることもあるけれど、そんな時こそ今の自分を受け入れる。そうできるようになったのは『つながる』のお陰だし、他の原作だったら、立ち止まったままだったかもしれません。心の書というか、気づきの書ですね」
それだけに、原作も含めてこの作品を広めたいという思いは強い。上映だけでは終わらない、一つの目標にたどり着いた中原は、自分のようにインディーズ映画に携わる人々に向けてエールを送った。「こんな風に時間がかかっても、何かにつまづいて立ち止まってしまっても、その時々の今を受け入れることで先に進めたりするので、あきらめず、でも健康第一でチャレンジしてほしいなと思っています」(編集部・入倉功一)