上白石萌歌、星野源との声優共演に感激 音楽の話で盛り上がる
『サマーウォーズ』『バケモノの子』などで知られる細田守が監督・脚本・原作を務めた映画『未来のミライ』で、主人公の男の子・くんちゃんの声に抜擢された女優の上白石萌歌。細田組の優しい空気感、そして、以前から大ファンだったという、おとうさん役の星野源との共演に支えられながら声優初挑戦を乗り切った彼女が、「アットホームだった」という制作現場を振り返った。
本作は、細田監督らが設立したアニメーションスタジオ制作会社「スタジオ地図」の企画・制作による、ちょっと変わった「きょうだい」の物語。生まれたばかりの妹にかかりきりの両親(おとうさん:星野/おかあさん:麻生久美子)に不満を募らせる4歳の男の子くんちゃん(上白石)が、ある日、未来からやって来たセーラー服姿の妹・ミライちゃん(黒木華)と出会い、家族のルーツをめぐる大冒険に出る。そのほかの声優陣に、吉原光夫、宮崎美子、役所広司、福山雅治ら豪華キャストが名を連ねる。
現在、18歳の上白石は、当初、ミライちゃん役のオーディションに参加したが、細田監督から突然、ある提案をされたという。「ミライちゃんの声を録って帰ろうとしていたときに、『試しにくんちゃんのセリフ、読んでもらっていいかな?』と頼まれて。それで、何の準備もないまま、急きょ声を録ることになったんです」。その声を聞いた細田監督は、「彼女は感じて芝居をする。だから声に嘘がない」と高く評価。主人公くんちゃん役に大抜てきされた上白石は、4歳の男の子役に挑むことになる。
気になるのはその声。本編では上白石の素の声をそのまま生かしているようにも思えるが、果たしてどんな意図があるのか。「細田監督が『4歳の男の子を少し意識した声と、あなたの素の声を聞かせてほしい』とおっしゃったので、実際に音を録ってみたら『僕は後者がよかった』と言ってくださって。意識して幼い声を作るより、自分の感情から出る声の方がいい、というご判断だったのだと思います」と考えを巡らせる。
とはいえ、上白石にとって声優初挑戦。女優とは明らかに違うアプローチに最初は不安しかなかったという。ところが現場に入ってみると、その緊張はあっという間に消え去った。「細田監督をはじめ、スタッフ、キャストの皆さんが醸し出す優しい空気感が、わたしをすぐに安心させてくれました。それに、別録りではなく、共演者全員が同じブースに入って収録するという方法だったので、皆さんとの交流がとにかく面白かった。大好きな星野さんともたくさんお話ができて幸せでした」と声を弾ませる。
「赤ちゃんミライちゃんを演じた声優の本渡楓さんを交えて、『俳優と声優の違い』についてお話ししたり、時には他愛もない話で大笑いしたり、思い出はたくさんあって特に音楽の話が心に残っていますね」と思いを巡らす上白石。「わたしは星野さんの「エピソード」(2011年リリースのアルバム)が大好きなんですが、そのことをご本人に熱弁してしまったことがあって(笑)。星野さんはニコニコしながら耳を傾けてくださって、そのアルバムを制作していた時に聴いていた音楽まで教えてくださったんです。何とも贅沢で貴重な時間を過ごさせていただきました」と嬉しそうに語った。
声優初挑戦にして「伸び伸びと楽しみながら、自分の全てを出し切りました」と目を輝かせる上白石。細田組、そして星野らとの思い出を胸に、ますます演じることに意欲を増した彼女の“未来”に期待したい。(取材・文:坂田正樹)
映画『未来のミライ』は上映中
【ヘアメイク】冨永朋子(Allure)【スタイリスト】嶋岡隆