ゲイの弁護士カップルを追ったドキュメンタリー、監督を直撃!
現在、ニューヨークのジャパン・ソサエティーで開催されているイベント「ジャパン・カッツ!」で上映されたドキュメンタリー映画『愛と法』(9月下旬より全国順次公開)について、戸田ひかる監督が、7月20日(現地時間)、ジャパン・ソサエティーで単独インタビューに応じた。
本作は、大阪で弁護士事務所を共同経営し、プライベートでもパートナーの弁護士カップル、吉田昌史さんと南和行さんの日常を映し出したドキュメンタリー。さまざまな依頼人を抱え、学校や職場でゲイと明かせずに悩む人々の相談に乗りながら、LGBTの人々に対する理解を深める二人の活動を追う。
戸田監督は、別の作品に携わっていた2012年に、大阪で吉田さん・南さんと初めて会ったという。「そのとき、まずカップルとしての彼らの魅力に惹かれたんです。彼らがお互いの弱さを受け入れている姿がすごく素敵でした。また、二人の弁護士という人の悩みを聞く立場から、日本のいろいろな悩みが見えるのではないかと考え、彼らを撮りたいと思ったんです」。こうして、2014年から撮影許可を得て、彼らを追うことにしたそうだ。
撮影に関しては、二人ともオープンで、さらけ出す勇気みたいなものがあるように思ったという戸田監督。「二人は(私生活も)結構さらけ出すタイプで、カメラの前ですごく自然な姿でした。吉田さんは、カメラをあまり気にしないので、あってもなくても素でしたし、南さんは、自称・目立ちたがり屋なみたいなところがありました。わたしとの信頼関係も築けていました」。
とはいえ、弁護士という職業柄、守秘義務がある。「当然、クライアントのプライバシーは第一に守っているため、わたしが撮ることができるクライアントは限られていました。映画内に登場するアーティストのろくでなし子さんや、君が代を歌わない先生方などがそうですが、彼らのような自分の行動を発信したい方々には、吉田さん・南さんから許可を得てもらい、取材させてもらいました」。
そんなオープンな彼らだが、南さんも母親に受け入れてもらうまでには、何度も話し合ったそうだ。「南さんのお母さんは、『(ゲイである息子を)支えるというよりは、受け入れることが大事なんだよね』と言っていました。映画内で、最初に息子がゲイであることを告げたときのことを話してくださっているのですが、『誰も教えてくれなかったから、知らなかった』と語っているんです。南さんもそれまで、自分の周りにゲイをオープンにしている人がいなかったら、理解できない人がいるのは当然だと思ったそうです。そして、その思いが今作への参加につながっているそうです」。現在、南さんの母親は彼らの法律事務所でアシスタントとして働いている。
最後に、今作をアメリカ人にどのように理解してほしいのか聞いてみると、「日本の作品の映画祭に来られる海外の人は、ある程度日本の文化の知識はあって、意識も高い方々だと思います。ですから、日本の中のストーリーというよりは、日本の社会が背景にある中で、個々のストーリーとして観てほしいですね」と戸田監督。子供の頃オランダで育ち、学生時代からロンドンで生活していたという彼女は、海外での日本へのステレオタイプには敏感に育ったそうだ。「いろいろな人がいろいろな葛藤を抱え、前向きに進んでいる日本人の姿を見てほしい」そんな思いを明かし、締めくくった。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)