マーベルコミック編集者が語る日本のマンガの影響
『アベンジャーズ』シリーズをはじめとする大ヒット映画の原点でもあるマーベルコミックのシニア・バイスプレジデントにして、エグゼクティブ・エディターを務めるトム・ブレヴォートが、ニューヨークの本社でインタビューに応じ、日本愛を交えて同社の展望を語った。
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入社29年を誇るトムは、編集者として「アベンジャーズ」をはじめマーベルの主要キャラクターが登場するほぼ全のコミックに関わり、映画化もされた「シビル・ウォー」「ウィンター・ソルジャー」を直接担当。現在は編集者たちの指導も受け持つなど、マーベルの屋台骨を支えている。
そんな彼の携帯電話の待ち受け画面は「宇宙戦艦ヤマト」(英題:Star Blazers)だ。1970年代後半に英訳版のコミックを手にとって以来、「ヤマトの大大大ファンなんです!」というトムの口からは、松本零士を筆頭に、「マジンガーZ」「デビルマン」の永井豪、「美少女戦士セーラームーン」の武内直子、手塚治虫らの作品やスタジオジブリまで、彼が敬愛する作品の名が次々に挙がる。「僕は日本のマンガやアニメの長年のファンなんです。だからいつも日本のマンガやアニメの最新状況を気にしています。どんな新しい作品が生まれているんだろう! って」
そんなトムから見て、日本のマンガ・アニメがマーベルコミックに与える影響は、徐々に高くなっているという。「メキシコ出身の(コミックアーティスト)ウンベルト・ラモスはマンガスタイルを取り入れているし、1990年代に『X-MEN』を描いていて、今も表紙などを担当しているジョー・マデュレイラからも日本のアニメの強い影響が感じられます。特にここ20年ぐらいで日本のマンガがたくさん英語に翻訳されるようになりました。だから多くのアーティストたちが日本のマンガに影響を受けています。特に絵は、マンガの感性に影響を受けていますね」
確かにマーベルの社内を見渡すと、デスクに「鋼の錬金術師」のポスターを掲げている社員の姿も。現マーベル編集長のC.B.セブルスキーは日本在住経験があり、マンガ・コミックの研究者でもある。「世界が小さくなるにつれ、こういった様々なキャラクター、財産、番組は広範囲に広がり、お互いに影響を与えるようになります。同じように、日本で『マーベル フューチャー・アベンジャーズ』のアニメが作られていますし、日本のアニメがアメリカで放送されています。世界中で、新しい、若いクリエーターたちが登場して、作品の開発を進めるのは自然なことです。自分が見てきたすべてのものに触発されて、自分の感情に触れることによってね」
それでも、コミック編集においてトムに最も影響を与えているのは、来年で設立80年を迎えるマーベルの歴史そのものだ。「僕の一番のインスピレーションは、マーベルのオリジナルクリエーターたちで形成されています。スタン・リー、ジャック・カービー、そしてスティーヴ・ディッコ。あとはこのオフィスで目にするものや、周りのみんながやっていること。ここにみんながいるからですね」
今後は、映画『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』の敵役サノスの部下として登場した悪役チーム“ブラック・オーダー”のシリーズを展開したいというトム。彼らはもともと、トムが編集したコミックで誕生したキャラでもあり「本当にいい映画を作るのは難しいことです。しかし、彼ら(マーベル・スタジオ)の多くの映画がうまくいきました。これは途轍もない功績ですよ。それに貢献した者としては、映画を観て『このシーンのアイディアは、はるか昔のある木曜日に考えついたアイディアだ』と気づくことができます。そして今では世界中の誰もがそれを目にすることができるのです」と笑みを浮かべた。(編集部・入倉功一)
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