環境問題に立ち上がる学生たちを描き話題のドキュメンタリー、監督らが語る
世界中が環境汚染問題に直面する現在、環境保護のために斬新な発想で打開策を打ち立てる若者たちが参加する「インテル国際学生科学技術フェア」を描いた話題の映画『インヴェンティング・トゥモロー(原題) / Inventing Tomorrow』について、ローラ・ニックス監督と学生のサヒティ・ピンガリさんが、8月30日(現地時間)、ニューヨークのCinetic Mediaでインタビューに応じた。
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本作は、今年のサンダンス映画祭に出品された話題のドキュメンタリー。空気汚染、水質問題、鉱山の環境破壊など、世界中でさまざまな問題を抱える地域の若者たちが、その問題を解決すべく新たな打開策を研究した過程と、彼らがインテル国際学生科学技術フェアに参加し、その打開策をプレゼンするまでを捉えた。
前作『イエスメンの反乱』(日本未公開)でも環境問題の活動家を描いているニックス監督。今回、世界中の科学に携わる若者と、インテル国際学生科学技術フェアについて描こうと思った経緯を、現在の環境問題の危機をいかに人々に伝えるかということに常に興味を持っているからと語る。「通常ならば、その状況の悲惨さは、ひどい環境被害にあった人々のストーリーを伝えればよく、意外と簡単に伝えられるの。でも、わたしたちにはその環境問題を打開する能力やテクノロジーがあるから、問題点だけでなく、そういった部分(問題を打開する能力やテクノロジー)に光を当てることへの重要性も考えたのよ」。そのアイデアを探すため、インテル国際学生科学技術フェアを訪れた際、多くの学生と出会ったことが今作を制作するきっかけになったと明かした。
インテル国際学生科学技術フェアでは、世界約75の国から約1,800人もの学生が選考されるそうだが、その前には、各国で科学技術フェアが開催され、それぞれの国から代表が選考される。「アメリカは州ごとにその代表が決められているわ。国によって違っていて、中国などは数億人の学生が参加し、その中から40~50人が参加できるの」とニックス監督。一方、インドでは「最初にオンラインで参加者を募集し、審査員が学生それぞれのプロジェクトを審査してから100人に絞り、その100人が国が開催する科学技術フェアに参加、その中から約10~20人が選ばれるの」と説明するのは、インド代表のサヒティさん。学生は、レポートとそのプロジェクトを伝えるデモンストレーションの準備をするそうだ。サヒティさんは湖の水質問題の改善策についてレポートを披露し、それが評価され、アメリカのスタンフォード大学に通うことが決まっている。
また、このフェアにおいて、おそらく最も貴重な体験は他国の学生との出会いだとサヒティさんは語る。「医学者や科学者なども招待され、彼らにも会えるけれど、このフェアに参加する学生たちからは、とても素晴らしいインスピレーションを受けることが多いわ。彼らとは、自分のレベルでの会話ができて、もしあの学生がとても印象的なプロジェクトをプレゼンしていたら、自分もそんなことができるんじゃないかと感化されるのよ」。
学生という立場から、少ない資料でありながらも勇気を持って、環境問題に取り組んでいる彼ら。ニックス監督は、「そのビジョンと気力は、われわれ大人にとっても良い見本になっていると思うし、われわれもその進歩を支えていかなければいけないわ」と語り、今作から勇気を見いだしてほしいと真剣なまなざしで訴えた。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)