山田裕貴、俳優としてまだまだ中途半端な心境
社会現象となった台湾映画が、日本を舞台に生まれ変わった『あの頃、君を追いかけた』で、愛おしくもカッコ悪い主人公・浩介を演じた山田裕貴。昨年12本の出演映画が公開されるなど、役のふり幅の広さは群を抜いている。演じる役すべてがハマリ役といわれる山田が、俳優としての自身の立ち位置について心境を語った。
リトルリーグからシニアリーグと野球選手の夢を追いかけていたが、「プロになれるか分からないまま続けるのは、時間がもったいない」と高校卒業と同時に俳優の道を目指す。その後、2011年に『海賊戦隊ゴーカイジャー』シリーズで俳優デビュー。転機となったのは、15年から始まる『闇金ドッグス』シリーズだろう。ヤンキー映画『ガチバン』からの派生キャラ、元ヤクザの組長・安藤忠臣。再起を懸け、闇金屋を始め、クールでワイルドな闇金融界の異端児へと成長を遂げていく彼を、山田は繊細かつ大胆な芝居でアプローチ。さらに、メディアミックスで幅広い層から支持された『HiGH&LOW』シリーズでも鬼邪高校の番長・村山。こちらも予測不能なイカレた演技が大きな話題を呼ぶなど、ハマり役となった。そういった世間からのイメージについて聞くと、「イメージがつくほど、世間に認知されているとは思ってないですし、僕自身、まだまだ中途半端な位置にいると思う」とかなり俯瞰(ふかん)して自身を捉えている様子。
今回、リメイク版で主人公を演じるにあたり、台湾オリジナル版を観た彼は、主人公の「世界を動かすようなスゴい人間になりたい」というセリフに感銘を受けたという。なぜなら、彼も高校時代に主人公・浩介と同じような思いを抱いていたからだと明かした。意中のヒロイン・真愛の前で常に馬鹿げた行動を取り、彼女から幼稚と言われてしまうほど、その空回りっぷりも愛おしい浩介は、実績とキャリアがある山田だからこそ演じ切れたといえる。オリジナル版のファンをも唸らせる、彼の持つアブなさと愛おしさとカリスマ性。「これまでの活動の集大成になれば……」と語るほど、本作にはさまざまな山田裕貴が詰まっている。今、まさに山田裕貴が“日本映画界を動かすようなスゴい俳優”になろうとしている。(取材・文:くれい響)
映画『あの頃、君を追いかけた』は10月5日より全国公開