底辺に生きるダメ野郎たちの痛快群像劇!タランティーノ絶賛の『ローライフ』
アメリカ社会の“底辺”に生きる人々の人生が交差するさまを描いた痛快な群像劇『ローライフ』が、今月29日より大阪・シネマート心斎橋、来月16日~18日に池袋・新文芸坐で上映される。クエンティン・タランティーノ監督から「天才、現る。強烈な一撃だ!」と絶賛を受けた一本だ。
舞台はメキシコ国境に位置するロサンゼルスのとある街。不法移民やチンピラ、ジャンキーが交差し、犯罪・汚職のはびこる街で、それぞれに問題を抱えた登場人物を追う4つの物語が、やがてひとつになっていくさまが描かれる。
タランティーノが絶賛し、章仕立ての別々のエピソードが集約していく犯罪群像劇ということから、名作『パルプ・フィクション』(1994)が思い起こされるが、『ローライフ』の主人公たちは、『パルプ~』のキャラクターのようなカッコよさは微塵もない、最低な人生を送る奴らばかりだ。
元レスラーのエル・モンストロは、先代から受け継いだ誇りを胸に覆面姿で生きているが、現実には、移民の臓器売買や麻薬売買に手を染める悪党テディの使い走りとして借金取りの日々。彼の子を身ごもるテディの娘ケイリーは薬物中毒だ。さらに、元アル中で腎臓を壊した夫を抱えて途方に暮れる安モーテルの女主人クリスタル、刑務所で顔面に鉤十字の刺青を入れたおバカだが友達思いの白人ランディ、親友面でランディを利用する黒人会計士のキースなど、普通の映画ならまず主人公にならないであろう、ダメ人間たちがそろっている。
しかし、そんな脇役にしかならない彼らが織りなす群像劇だからこそ、本作は先が読めない。そして、徹底的にダメでカッコ悪い彼らだからこそ、劇中で見せるほんの少しの良心や勇気に感情が揺さぶられる。最初はバラバラだった彼らの物語が、テディ討伐という目的に向かって収束していくクライマックスには、得も言われぬ高揚感を味わえるはず。全く美男美女ではない彼らの表情が、次第に味のあるイイ顔に見えてくる。低予算ながらバイオレンスシーンには並みならぬ気合が込められており、ジャンル映画ファンも必見の一本になっている。
監督のライアン・プロウズはもちろん、全編にわたって覆面姿を貫いたモンストロ役のリカルド・アダム・サラテなど、スタッフ・キャストも無名揃いなため、文字通りの青田買い映画としても注目。今年の7月に新宿・シネマカリテで毎年行われている「カリテ・ファンタスティック!シネマ・コレクション2018」で上映されたが、限定公開で終わるにはもったいない一本なだけに、劇場で観られる機会は貴重だ。(編集部・入倉功一)