演技未経験の15歳・YOSHIが主演に抜てき 大森立嗣監督『タロウのバカ』
『ぼっちゃん』『さよなら渓谷』などの大森立嗣監督が脚本も手掛けたオリジナルの新作映画『タロウのバカ』が製作され、演技未経験の15歳の新人・YOSHIが主演に抜てきされた。
大森監督が長年温めてきた本作は、一度も学校に行ったことのない少年タロウの物語で、過激でセンセーショナルな内容になるという。ただ自由に生きているタロウは常識の枠にとらわれない少年という役どころで、たくさんのオーディションを実施しても大森監督のイメージ通りの人物はなかなか見つからなかった。そんな中、大森監督が以前から気になっていたモデルのYOSHIにアプローチし、出会ってすぐに確信。YOSHIの雰囲気と存在感は異彩を放っていたという。
インスタグラマーでもあるYOSHIは中学生のときに、カニエ・ウエストのクリエイティブディレクターで今年ルイ・ヴィトンのメンズ・アーティスティックディレクターに就任したヴァージル・アブローと出会い、アブローのファッションブランドのモデルを務めた。その後も「HELMUT LANG(ヘルムート・ラング)」「NIKE(ナイキ)」などの世界的ブランドのモデルとして活躍し、今年8月には雑誌「Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)」の次世代を担う30歳未満のイノベーター30人を表彰する企画「30 UNDER 30 JAPAN」で「The Arts」部門のひとりに選出された。
演技経験のないYOSHIだが、大抜てきとなるオファーを快諾。撮影に入るまでに大森監督からの演技指導と入念なリハーサルが行われ、9月中旬にクランクインして現在撮影中だ。YOSHIは「不安よりも楽しみの方が大きい」と初挑戦の胸中を明かし、大森監督は「これまで映画をやってきてこんな子供を見たことがありません。私にとって彼は純粋な驚きでした」とYOSHIの印象を語っている。映画は2019年に公開される予定。以下に二人のコメント全文を掲載する。(編集部・小松芙未)
YOSHI
この話を頂いたとき、台本の内容も強烈だったので、家族には最初は反対されたんですが、僕の気持ちとしては今回、興味本位でやってみる、って感じですね。演技自体が初めてですが、不安よりも楽しみの方が大きいです。でも、一発目が主役となるとプレッシャーはすごいです。演じることがどういうことかは、まだわからないところが多いんですけど、自分のできる限りの表現をしていきたいと思っています。大森監督の第一印象は“変態”ですね(笑)。僕は「男は変態であるべき」って勝手に思ってるんですよ。そっちの方がかっこいいんじゃないかって、男として。映画の完成が今から楽しみですが、とにかく、頑張ります! 自分の座右の銘は「今、この瞬間を生きろ」です。
大森立嗣監督
今回主役に選んだのは演技経験の全くないYOSHIという15歳の少年です。300人以上の中から選ばれた少年です。でも500人に会っても千人に会っても、出会えなかったかもしれません。これまで映画をやってきてこんな子供を見たことがありません。私にとって彼は純粋な驚きでした。決して物分かりのいい、躾のできた、行儀のいい子供ではないです。だからこそ彼は今この世界で闘っています。僕はここにいると叫んでいます。僕は振り向かない。振り向くのはあなたたちだと言っているようです。彼の純粋な眼差し、未完成な体で駆け回る姿、叫び、笑い、涙する姿がこの映画に命を注ぎ込みます。彼の純度がスクリーンを通してやがて観客に、感動を呼び込むと確信しています。