『未来のミライ』細田守監督に子供の観客が素朴な質問
第23回釜山国際映画祭
『時をかける少女』(2006)、『サマーウォーズ』(2009)など、韓国でも多くのファンを抱える細田守監督の新作『未来のミライ』が、第23回釜山国際映画祭ワイド・アングル部門アニメーションショーケースに出品され、6日の上映後に細田監督がQ&Aを行った。
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本作は、4歳で甘えん坊のくんちゃんが、生まれたばかりの妹に両親の愛情が注がれることに困惑するなか、未来からやってきたというセーラー服姿の妹と出会い、不思議な冒険を繰り広げる物語。
細田監督にとって本映画祭は、出世作『時をかける少女』が紹介された原点のような場所。「12年前は誰も知らない『時をかける少女』と、誰も知らない僕を釜山の皆さんは温かく迎えてくれました。皆さんとお話しすると新しい作品を作るパワーをもらえます」と釜山に凱旋した感想を述べると、会場からは割れんばかりの拍手が起こった。
Q&Aが始まると、我先にと挙手する観客。中でも注目を浴びたのは映画の中で描かれた大人と子供の存在について。細田監督は、「大人というのは、子供のころの自分を忘れている。妹が生まれて自分の居場所がなくなるということは、初めて愛情を失う経験を知ること。大人だって失恋すると悲しい気持ちになる。それは4歳児でも大人でも変わらない」と映画に込めたメッセージ、持論を述べた。
イベントでは、くんちゃんという名前の由来にまつわる話題も。「くんちゃんというのは、『~君』という呼称でまだ何者でもないという(抽象性を込めた)意味を含んでいます。名前の後にこのような呼称を使うのは日本と韓国くらいで、ヨーロッパの人に説明しても理解してもらえない」と他国での反応の違いを説明した。
上映会場には大人の映画ファンだけでなく、子供の姿もちらほらと散見。小学生くらいの子供が細田に「監督が画を全部描いたのですか」と質問すると会場は大爆笑。細田も笑いながら「僕も子供のときはそう思ってた。気持ちはよくわかる」と同調。「この映画は300人以上の人が作っていて、メインの人は20人くらい」とアニメが大人数による共同作業であることを教え、「君もやってみるかい?」と、質問した子供に意味深長に問いかけた。すると子供は困ったように照れながら「はい」と答え、場内はほっこりした笑いに包まれた。『未来のミライ』は今冬韓国にて公開予定。(取材・文:土田真樹)
釜山国際映画祭は13日まで開催