井浦新、ここが若松プロの最前線!映画作りの熱きDNAを継承
俳優・井浦新が、恩師である故・若松孝二監督の若かりし日々を演じた映画『止められるか、俺たちを』が13日に公開され、東京・テアトル新宿での初日舞台あいさつに、メガホンを取った白石和彌監督とともに出席。若松監督の晩年5作品にも出演した井浦は「実体験で知っている若松監督を、芝居を通して観ていただいて、僕だけの若松監督がみなさんに届いたことがうれしい。若松監督の血を受け継いだ映画人やレジェンドはまだいっぱいいます。みなさんの応援があれば、白石監督が第二弾を撮ります」と会場を盛り上げて歓声を浴びた。
1963年のデビュー後、『壁の中の秘事』が1965年のベルリン国際映画祭に正式出品されるなど、過激なピンク映画の傑作を数多く残し、一般映画でも『水のないプール』(1982)『キャタピラー』(2010)などで知られる若松監督。本作は、1960年代末の若者たちを熱狂させた若松監督(井浦)と彼の若松プロダクションに集まった映画作りに情熱を傾ける若者たちの姿を、若松プロに飛び込み助監督を務めた実在の女性・吉積めぐみ(門脇麦)の視点から浮き上がらせる青春群像劇。若松プロダクションの映画製作再始動の第一弾として製作された。
井浦は若松監督への思いを「2006年に若松プロの門を叩き、『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)』から5本の若松監督作品に参加して、若松監督の背中を見続け、映画作りと生き方そのものの勉強をさせてもらいました」と述べた後、「正直、役者人生の中で、自分の恩師を演じるなんてことが起きるとは、思ってもいなかったです」と述懐。さらに一緒に登壇した出演俳優たちを見まわして「若松プロの映画、みなさん、もっと観たいですよね。ここにいる俳優たちを覚えておいてください。これが若松プロの最前線。これから、それぞれの仕事で、みんな、どんどん飛んで行きます」と自身が演じた若松監督ばりの熱っぽい言葉で、観客に呼びかけた。
壇上には、この日、井浦とともに、俳優の山本浩司、岡部尚、大西信満、タモト清嵐、伊島空、外山将平、藤原季節、上川周作、中澤梓佐、柴田鷹雄、高岡蒼佑、脚本の井上淳一も登壇した。
本作のメガホンを取った白石監督は、2012年に亡くなった若松監督の愛弟子。白石監督は「若松さんは自分が映画になるなんて1ミリも思っていなかったでしょう。たぶん『お前ら何やってんだバカヤロー』って、今頃、まんざらでもない顔をしつつ、怒っていると思います」と笑わせながら「ただ1つ約束できるのは、ここにいる役者全員を若松監督は大好きになってくれるってこと。それは確信しています」とキャストをねぎらい、「小さい映画ですが魂こもってます。『カメラを止める』という選択肢は若松プロにはハナからありませんでした。監督~!」と最後は天に向かって叫び声をあげ、万感の表情だった。(取材・文/岸田智)