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注目の映画スタジオA24が放つ『バグダッド・スキャンダル』見どころとは

「A24」について熱く語り合った松崎まこと(左)と松崎健夫
「A24」について熱く語り合った松崎まこと(左)と松崎健夫

 国連の人道支援プログラムを背景に、実際に起こった巨額の汚職スキャンダルを描く映画『バグダッド・スキャンダル』の公開に合わせた試写会&トークショーが29日、都内で行われ、松崎まこと(映画活動家・放送作家)、松崎健夫(映画評論家)が出席した。二人は作品の見どころや、本作を手がけた映画界注目の気鋭スタジオ「A24」の戦略などについて、縦横に語り合った。

【写真】『バグダッド・スキャンダル』場面写真

 本作は、元国連職員のマイケル・スーサンが、自身の体験を基に執筆した小説を原作とするポリティカルサスペンス。貧困にあえぐイラク人民を救うための人道支援計画「石油・食料交換プログラム」の裏で行われていた政治スキャンダルを描く。

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 本作の見どころについて、まことは「最近の『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書 』もそうだけれど、巨大権力の不正や嘘を、時間が経ってもしっかり検証して、真相を描くのは、アメリカ映画のいい伝統ですね」と口火を切ると、健夫は「僕が注目したいのは、事実とフィクションをうまく使った演出法で、お手本のようなうまさがある」と指摘。続けて「映画の最初と最後、同じような画になりますが、これを『ブックエンド方式』の演出とか言いますね。前後に挟まれた部分は、映画の中で起こった出来事だという意味。本作は、実際の事件を扱うけれど、エンターティンメント性のあるフィクションだとも示していて、映画の基本に沿ったうまい構成ですよ」と話す。

 さらに本作は、 第89回アカデミー賞作品賞に輝いた『ムーンライト』など、2012年の設立からわずか6年で、映画界に旋風を巻き起こしたインディペンデント系スタジオ「A24」が製作したことでも注目されている。10月、11月には、本作を合わせ『アンダー・ザ・シルバーレイク』『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』『イット・カムズ・アット・ナイト』『へレディタリー/継承』の5作が日本公開となる。

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 健夫は「ターニングポイントは2016年のアカデミー賞。ブリー・ラーソンが主演女優賞を獲った『ルーム』、視覚効果賞の『エクス・マキナ』、長編ドキュメンタリー賞の『AMY エイミー』、この3作で一気にA24の知名度が上がった。特に『エクス・マキナ』は『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』を抑えての受賞だったので、衝撃でした」と語り、「大手メジャーの製作費が巨大化し、興行収入の回収リスクで、オリジナル脚本に手が出しにくくなっている中、A24は、アート性とエンタメ性を兼ね備えたオリジナル脚本を発掘して、映画化している。アメリカ以外の国の企画にも積極的に関わって、国際映画祭で評価を獲得しているところも、感度の鋭い映画ファンに受けているんでしょう」と説明。

 これに対し、まことは「日本でいきなり5作(公開)って、大丈夫?」とツッコミつつも「大手ができないことをやる、特に本作のような社会派の内幕ものって、日本映画では決定的に欠けている部分という気はする」と、A24のオリジナリティに期待を見せていた。(取材・文/岸田智)

映画『バグダッド・スキャンダル』は11月3日よりシネマカリテほか全国順次公開

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