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政権から迫害を受けた歴史が類似…バスク地方と沖縄、音楽で結ぶドキュメンタリー

『ザ・ペインター(英題) / The Painter』のワンシーン
『ザ・ペインター(英題) / The Painter』のワンシーン

 スペイン・バスク地方と沖縄の音楽を結ぶドキュメンタリー映画『ザ・ペインター(英題) / The Painter』で製作され、先ごろ開催された第66回サンセバスチャン国際映画祭のバスク映画部門でワールドプレミア上映された。オイエル・アランサバル監督は「両国のミュージシャンが音楽を通じて会話をしていた。美しい瞬間だった」と沖縄での体験を嬉々として語った。

オイエル・アランサバル監督
オイエル・アランサバル監督

 同作はバスク地方のシンガーソングラター、ミケル・アダンガリンに約2年間半密着しながら、新作アルバムの創作過程に迫るもの。バスク音楽と言えば、伝統楽器トリキティシャを取り入れたロックバンド「ESNE BELTZA(エスネ・べルーサ)」が真夏の祭典「FUJI ROCK FESTIVAL'18」に出演するなど注目が高まっているが、アダンガリンはギター片手に渋い歌声を響かせるバスク版フォーク。キャリアは20年以上になる。

ミケル・アダンガリン
映画完成の30日前に、劇中にも登場する母親が急逝し、涙ながらに舞台挨拶を行ったミケル・アダンガリン

 そんなアダンガリンの歌に魅せられたのは人がもう一人。それが沖縄在住の英国人音楽ジャーナリスト、ジョン・ポッターさんだ。

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 ポッターさんは沖縄音楽を掘り下げた著書「The Power of OKINAWA」もあり、沖縄音楽とバスクの音楽を文化をつなげる活動も行っている。そのポッターさんからアダンガリンに沖縄のライブ出演の依頼が届き、急きょ、その模様もドキュメンタリーに加えることになったという。

『ザ・ペインター』製作チーム
ミケル・アダンガリン(写真前列中央)と『ザ・ペインター(英題) / The Painter』の製作チーム - photo:Montse Cadtillo

 来日したのは、今年の4月~5月。アダンガリンもアランサバル監督も沖縄に関する知識は全くなく、日本に来るのも初めて。だがすぐに宮古島出身のシンガーソングライター下地イサムや三線職人の顔も持つ“沖縄ワールドミュージックアーティスト”の新垣睦美らとの交流を通して、すっかり沖縄に魅了されてしまったという。アランサバル監督は10日間ほどの滞在だったが、アダンガリンに至っては約40日も沖縄の生活にどっぷり浸かった。

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 アダンガリンが「バスクと沖縄は中央政権から迫害を受けた歴史や、独自の言語を持っているなど背景が似ている。さらに故郷への思いをつづった歌詞など、歌にしているテーマも共通していると感じた」と言えば、アランサバル監督も「沖縄の人はフレンドリーでおおらか。特に市場とソーキソバがお気に入り」と沖縄への思いは今も尽きないようだ。

 実際、沖縄民謡「月ぬ美しゃ(つきぬかいしゃ)」は今も沖縄の方言で歌えるほど聴き込んでいるそうで、アランサバル監督の家では娘まで覚えてしまったという。

 映画は今後、国際映画祭を巡回する予定だが、いずれ沖縄での上映を実現させたいという。そして沖縄音楽から多くの刺激を受けたというアダンガリンは「またぜひ沖縄のミュージシャンたちとコラボレーションをしたい」と再会を楽しみにしているようだ。(取材・文:中山治美)

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