吉田羊&太賀、戦い抜いて作った映画への思い語る
女優の吉田羊と俳優の太賀が30日、都内で行われた映画『母さんがどんなに僕を嫌いでも』の完成披露試写会に、御法川修監督と共に出席。吉田は「映画で、ネグレクト(育児放棄)の当事者を救うことはできないとずっと思っていましたが、予告編を見た当事者の方のツイートを読んで、誰かの背中を押す力が、この映画にはあるかもしれないと思い直しました」と真摯に語りかけた。
本作は、漫画家・歌川たいじが自身の壮絶な母子関係をつづったコミックエッセイを映画化した作品。幼少期から虐待を受け、親からも友達からも愛されたことがない青年タイジ(太賀)が、大人になって心を許せる友人たちと出会ったのをきっかけに、何年ものあいだ関係を断っていた母・光子(吉田)の愛をつかみ取ろうとするさまを描く。
太賀が「壮絶な人生を経験された(原作者の)歌川さんを演じるのは、簡単なことではありませんが、この物語の本質は、悲しみを乗り越える力強さだったり、人と人が寄り添う喜びだと思います。歌川さんが感じてこられた喜びも悲しみも、1つとしてこぼさずに演じたいと思いました」と役への思いを語ると、御法川監督が「歌川さんは、この映画の母のような存在。今日は心配で仕方なく、会場にいらっしゃってます」と客席の歌川を紹介し、会場から大きな拍手が起こった。
吉田は、光子が「あんたなんか、生まなきゃよかった」とタイジに発するセリフを挙げて「同じ言葉をお母さんからずっと言われてきたという当事者の方が『自分は、母と向き合いたいから、辛くてもこの映画を観ます』とツイートしてくださった。私たちが、文字通り戦って作ったこの作品に、人生はやり直せる、変えていけるという小さな希望の光を感じていただけたら、本作にも意味があると思っています」と会場に自身の思いを伝えた。
イベントでは、本作の主題歌「Seven Seas Journey」を書き下ろしたゴスペラーズがサプライズ登場し、アカペラで歌唱を披露した。この日がゴスペラーズと初対面という太賀と吉田。歌を聴いた太賀が「ヤバかったっす。感動しました」と言うと、吉田も「歌ちゃんが諦めずに生きてきて、よかったねって聴きながら思ってたの。ごめんなさい、泣いちゃう」と天井を見上げ、目にたまった涙を必死にこらえた。御法川監督も「ゴスペラーズの皆さんは、原作も脚本も読み、映画も観て、たくさんの候補曲を作ってくれた。こんなに愛情深く主題歌を作ってくれて光栄です」と、彼らの熱い姿勢に謝意を示した。(取材・文/岸田智)
映画『母さんがどんなに僕を嫌いでも』は11月16日より全国公開