杉咲花、感じる絆…是枝裕和監督が総合監修のオムニバス作
『万引き家族』などの是枝裕和監督が総合監修を務めるオムニバス映画『十年 Ten Years Japan』の初日舞台あいさつが、3日、東京・テアトル新宿で行われ、杉咲花、國村隼、太賀、川口覚、池脇千鶴、前田旺志郎、山田キヌヲら豪華キャスト陣が出席した。
本作は、香港で社会現象になったオムニバス作『十年』(2015年製作)を基にした国際共同プロジェクト「十年 Ten Years International Project」の日本版作品。映画『愚行録』の石川慶監督ら新鋭監督5人が、自国へのさまざまな問題意識を出発点に、10年後の社会や人間を描いた5作で構成される。この日はメガホンを取った早川千絵監督、木下雄介監督、津野愛監督、藤村明世監督、石川監督も登壇。現在パリで新作を撮影中の是枝監督からもメッセージ動画が届けられた。
作品の内容にちなみ「10年後の自分、どうなっていたい?」との質問に答えたキャストたち。杉咲は「10年後は31歳なんですが、美味しいご飯をささっと作れるカッコいい大人になりたいです」と思いを明かし、國村は「自分の10年後と聞かれると、何をしているかより、果たして生きているかなと思っちゃうんですが、もし生きていれば、今と同じことをしていると思います」とジョークを交え、会場を和ませる。
さらに、母の生前の個人的データをデジタル遺産として受け継いだ家族の物語「DATA」(津野監督)に主演した杉咲は、公開を迎え「こうして各監督とキャストの姿を見ていると、絆が感じられて、1つの作品を作ったのだなとアットホームな気持ちです」と感慨深げにコメント。
國村も「香港で生まれ、社会的なムーブメントとなった映画が、アジアや日本に波及して本作が出来上がった。映画が作られる新しいパターンが生まれたのかな、面白いメディアに関われたなと思っています」と本作への参加を喜んだ。國村は、AIによって理想的な道徳を刷り込まれたIT特区の小学校の子供たちを描いた「いたずら同盟」(木下監督) に主演する。
このほか、高齢者に安楽死を奨励する未来版の“姥捨て”を描く「PLAN75」(早川監督、主演・川口)、原発による大気汚染で地下への移住を強いられた母娘の姿を描く「その空気は見えない」(藤村監督、主演・池脇)、自衛隊徴兵制が義務化された日本を舞台にした「美しい国」(石川監督、主演・太賀)のオムニバス形式で、5つの未来が描かれる。
日本版のエグゼクティブプロデューサーで脚本と監督選出の最終ジャッジを行った是枝監督は、パリ・モンパルナスにある敬愛する映画監督ジャック・ドゥミの墓地からビデオメッセージを寄せて「総合監修という偉そうな何をしたんだかよくわからない立場で関わっておりますけれども(中略)とても若い意欲のある作り手たちと一緒に仕事をすることは、自分自身にも刺激になりましたし、とても良いコラボレーションだったんじゃないかなと思います」とスタッフ、キャストの苦労をねぎらった。(取材・文/岸田智)
是枝裕和監督 コメント全文
映画『十年』公開おめでとうございます。ここまで長い道のりでしたけれども、関係者の皆さん、監督、本当によく頑張りました。そして初日に劇場に足を運んでいただいた皆さん、本当にありがとうございます。監督たちにとってはこれ以上ない励みになると思います。
この作品に関しては、総合監修という偉そうな何をしたんだかよくわからない立場で関わっておりますけれども、年上の先輩として監督たちの相談に乗ったりアドバイスをしたり、そんな感じですね。とても若い意欲のある作り手たちと一緒に仕事をすることは、自分自身にも刺激になりましたし、とても良いコラボレーションだったんじゃないかなと思います。
そんなエネルギーをもらって僕自身も、本当はそっちにいなくちゃいけないのですけども、新作映画の撮影のために長期でパリに滞在しておりまして、ここはパリのモンパルナスの墓地です。隣にあるのが、ジャック・ドゥミ(監督)のお墓なんですけれども、今日はドゥミの命日なのでやってきました。月曜日から僕はまた撮影が始まります。僕も頑張っております。
監督の皆さん、この『十年』をひとつの良いきっかけにして、さらにこの先、もう長編が決まって撮影に入っている方もいるみたいですけれども、長編映画をぜひ頑張って撮ってください。是枝でした。
映画『十年 Ten Years Japan』はテアトル新宿ほかで公開中、全国順次公開予定