「けもなれ」「僕らは奇跡でできている」ストレスまみれのヒロインに共通点
10月期ドラマの中で、ストレスにまみれ爆発寸前のヒロインたちがいる。カンテレ・フジテレビ系「僕らは奇跡でできている」(毎週火曜夜9時~)の歯科医院長・育実(いくみ/榮倉奈々)と、日本テレビ系「獣になれない私たち」(毎週水曜夜10時~)の営業アシスタント・晶(あきら/新垣結衣)だ。いずれも職場でも恋愛でも切実な局面を迎え、その動向が注目されている。(※一部ネタバレあり、共に最新話までのストーリーに触れています)
両ヒロインには共通点があり、真面目な性格で、公私ともに「頑張っている」のに報われないこと。そして、彼女たちの人生に少なからずの影響を与えるのが非常に風変わりな人物であることだ。「リーガルハイ」「逃げるは恥だが役に立つ」などの新垣、「99.9-刑事専門弁護士-」「東京タラレバ娘」などの榮倉、鉄板の人気を誇る女優たちが持ち前の笑顔を封印して「ギリギリ」のヒロインたちにふんし、共感を誘うシリアスな演技を見せている。
榮倉演じる「僕らは奇跡でできている」の育実は、若くして院長を務めるエリート歯科医師。雑誌のインタビューを受けることもあり、絵に描いたような「デキる女」だが、恋人の鳥飼(和田琢磨)とは年収やステイタスに格差があり、しばしば気まずさが2人の間に漂っていた。そうして、ある日鳥飼が育実のマンションを訪ねた際に起きたふとした出来事が引き金となり、2人の溝は決定的なものに。プライドの高い育実は落ち込む気持ちに抗うかのように、これまで以上に仕事に打ち込むことで心の穴を埋めようとするも空回り。歯科衛生士・丹沢(トリンドル玲奈)らスタッフとの間に軋轢が生じてしまう。
そんな時、育実が抑え込んでいた感情を引き出すことになったのが、彼女の受け持つ患者の動物行動学者・一輝(かずき/高橋一生)だ。自分とは全く異なる価値観で生き、ところかまわず「のほほん」と動物のうんちくを展開する彼にペースを狂わせられイライラ。しかし同時に“気付き”を与える不思議な存在だ。一輝の「『ウサギとカメ』に例えるなら育実はウサギ」発言に悶々とする第2話も話題になったが、第5話で一輝から森に誘われた育実が終盤に泣きながら漏らした一言は、あまりに切実なものだった。第6話ではついに、これまで突き放していた一輝に胸の内を明かした。
一方、新垣演じる「獣になれない私たち」の晶は、ECサイト制作会社で働く営業アシスタント。やる気のない、あるいは仕事のできない営業たちに代わって、せっかち&短気なワンマン社長・九十九(つくも/山内圭哉)に四六時中こき使われるのが常。大手デベロッパー勤務の恋人・京谷(きょうや/田中圭)と表面上ではうまくいっている風だが、京谷の家に居座り続ける元カノ・朱里(しゅり/黒木華)の存在がネックとなり、常に「モヤモヤ」がつきまとっていた。そのうえ、京谷が新たな問題を持ち込んだことから第5話ではいよいよ晶は追い詰められ、プッツン寸前に。追い打ちをかけるかのような社長からのむちゃぶりにも鼻歌を歌いながら明るく対応するなど、明らかに様子がおかしい。
そんなふうに晶が傷ついて打ちひしがれる度に、そばにいるのが会計士の恒星(こうせい/松田龍平)。晶は恒星を「行きつけのバーのなじみ客」としか見ておらず、恒星は常に完璧にあろうとする晶のことを「タイプじゃない」とどちらかというと否定的に見ていたはずだが、成り行きから一夜を共にしようとする場面もあり、2人は予測不可能な関係に進展。女性を簡単に“お持ち帰り”してしまう恒星と、いちずな晶は犬猿の仲のようでいて、表裏一体に思えてくるのが面白い。
晶と育実の流した涙が報われる日は訪れるのか。育実&一輝、晶&恒星、微妙な関係にある彼らの行く末を見届けたい。(編集部・石井百合子)