北村匠海、同世代俳優は「ライバルでなく同志」
映画『十二人の死にたい子どもたち』(1月25日公開)で、杉咲花、新田真剣佑、高杉真宙、黒島結菜、橋本環奈らと共にメインキャストを務める北村匠海。十二人の同世代たちが一つの空間で演技をぶつけ合うシーンが大半を占める作品とあり、嫌でも互いをライバル視してしまいそうなものだ。北村に撮影の様子を聞いた。
集団安楽死をするため廃病院に集まった少年少女を描く本作は、「天地明察」などの作家・冲方丁のサスペンスが原作。『トリック』シリーズなどの堤幸彦監督が映画化した。キャストには第一線で活躍する者から今後を期待される者までがそろい、安楽死を求めてそれぞれ持論を展開していくさまにゾクゾクさせられるが、北村はあくまで自然体で撮影に臨んでいたと明かす。
「そういう世代なんだと思うんです。僕らよりちょっと上の世代の方の話を聞くと、どこかみんな互いをライバル視していて、自分にしかないものを確立しようと努力していたと……。僕たち世代の場合は互いを称賛し合うし、否定もし合う。“一緒に”いいもの作ろうって気持ちが強い気がして。だから今回もライバルというより同志でした。ゆるく聞こえちゃうかもしれないですが、芝居かましてやろうみたいな感じというよりは、みんなで話し合って良い映画ができれば僕はそれでいいなって思うんです」
上の世代の俳優からは「お前らにはバチバチが足りない」と言われることも少なくないというが、北村は「僕らはその感覚というよりは、良いものは良いし、悪いものは悪いという考え方なんです」と語る。だからこそこの撮影も面白かったと振り返り、本作に集まった十二人はまさに独特で「それぞれが自分のテリトリーで自分の戦い方をしていたと思う」と分析する。
北村が演じたのは、どこにでもいるように見えるさわやかな青年・ノブオ。「大抵のことは人並み以上にできる」と自覚しており、酷な境遇や個性的な風貌の他キャラクターとは異なる印象だ。
「僕自身そこそこ勉強もできた方じゃないかと思うし、足もクラスで3位とかでリレー選手でした。バスケと水泳もそこそこ。ノブオって一歩目二歩目三歩目ぐらいは誰よりも早いけど、そこからが遅いタイプだと思うんですよ。僕もそうなので、自分の中にある素材も使いつつ演じられたのかなと思います」と共通点は多かった。
一方で「意外とこういうナチュラルな役こそ難しい」とも打ち明ける。「あまりにも自分が自然に発するトーンや言葉で芝居をしてオッケーが出るものだから、ほんとにこれで正解なのかなって思う瞬間もあったのですが、監督を信じてついていきました」と役をつかむのには苦労があった様子だ。
2017年に公開された『君の膵臓をたべたい』は映画初主演作にして大ヒット作となり、北村は第41回日本アカデミー賞の新人俳優賞を受賞。それを経た昨年は「滝のような1年」だったという。「すごいスピードで1月から始まったと思えばもう12月みたいな……」と苦笑するが、決してブレイクを意識しているわけではいない。
「役者としては良い作品に出会えたり、素敵な役者の方たちとお芝居できたりとか、そういうことが生きがいで、この仕事をやっていて楽しいなって思うことなので。正直、大事なことではありますが、映画がヒットするとか“売れる”みたいな漠然としたことはあまり意識したことがありません」
北村が芸能界に入ったのは小学3年生のころ。幼いころからやってきて、点が線になってく感覚はある。「昔頑張っていたことが今実るというのはすごく感じていて、2018年もそういう1年だったかもしれません。両親にも『頑張った甲斐があったね』と言われました」。
充実感はとても大きいが、この仕事がここまで自分の生きがいになるとは思っていなかったとも話す。「小さいころからやっていたので、いつかは辞めるだろうみたいな気持ちもあった。それが自分のなかではかけがえのない世界になっている。そう感じられた2018年でした」。
「僕は完全に“ちりつも”タイプ」と語った北村。小さいことから着実に積み上げていく姿勢はブレイクしても変わらず、息の長い俳優になっていきそうだ。(編集部・小山美咲)