『イーダ』監督、カンヌ監督賞受賞の注目作を語る
第71回カンヌ国際映画祭(2018)のコンペティション部門で監督賞を受賞した『コールド・ウォー(英題) / Cold War』についてパヴェウ・パヴリコフスキ監督が、12月11日(現地時間)、ニューヨーク近代美術館のイベント Oscar Contender Series での特別上映後のQ&Aで語った。
本作の舞台は、第2次世界大戦後の冷戦下ポーランド。音楽学校の教官ヴィクター(トマシュ・コト)は、同校のオーディションでズーラ(ヨアンナ・クーリグ)という少女に出会う。特別な才能を持った彼女にヴィクターは魅了され、二人は恋に落ちるが……。映画『イーダ』のパヴリコフスキ監督がメガホンを取った。
子供の頃には動乱期のロマンスを描いた映画『カサブランカ』や『灰とダイヤモンド』などをよく観ていたというパヴリコフスキ監督。「もっともこれらの映画は愛を諦めて終わるが、今作では一緒になって終わるよ」と本作を語り、ヒロインのズーラについて「彼女はあらゆる様相を持ったサバイバーだ。映画開始まもなく、歴史的にかなり難しい状況下に置かれるが、とてつもない生命力とエネルギー、さらにどんな状況下でも即興的に生き抜くすべを持って人生を謳歌(おうか)しようとするが、時々恥もかいたりする。そして彼女は、音楽を(パフォーマンスを通して)具現化し、音楽学校のオーディションでは、感情的なパフォーマンスを披露するんだ」と興味深いキャラクターであることを説明した。
そのズーラを演じたヨアンナのキャスティングについては「彼女とは、『イリュージョン』で一度タッグを組んだことがあったが、実はそれ以前に、今から10年くらい前に『イーダ』のキャストの一人として考えていたことがあったんだ。そのときから、彼女の演技は素晴らしく、チャーミングで、ナチュラルだった。なんとか彼女をキャストできないかと考えていたが、その時点では『イーダ』の製作に入ることはできず、彼女を『イリュージョン』に出演させたんだ。あの映画では、ダークな要素を持った主演のクリスティン・スコット・トーマスとは正反対の性格の役柄を演じてくれたよ。あの映画でも彼女はポーランド語で歌うシーンがあったんだ」と明かした。今作の脚本では書いている時点から、ヨアンナを念頭に置いて執筆していたそうだ。
当初はカラーで撮影するつもりだったという本作。モノクロの撮影にしたことについて「モノクロのイメージが、観客の記憶に際立って残るようにしたかったんだ。そうなると、カラーではダメだと思ってね。『ゴッドファーザー』『天国の日々』など、少し前の時代を描いた作品でカラーの作品の秀作もあるけれど、今作は単にモノクロの感じが適していると思ったんだ」と説明した。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)