ピクサー創設者ジョン・ラセターが別会社で復帰へ セクハラ問題で退社 反発も
ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオとピクサーの制作部門でCCO(チーフ・クリエイティブ・オフィサー)を務め、セクハラ問題をきっかけに2018年末をもって同社から去ったジョン・ラセターが、別のアニメーションスタジオのトップとして雇用されたと、Varietyをはじめ各メディアが報じた。各所から疑問を投げかける声が挙がっている。
ピクサーの設立に携わり、『トイ・ストーリー』をはじめ数々の名作アニメーションを生み出したラセター。2017年の11月に、彼が社員に対して「体をつかんだり、キスしてきたり、身体的な特徴についてコメントしてくること」で有名であったと Hollywood Reporter が報道。このセクハラ問題の発覚を受けて、半年間休職した後、2018年末をもってスタジオを退社した。
今後についてラセターは「新たな創造的な課題への挑戦を始めるべきだ」と声明を発表していたが、『ターミネーター』や『ミッション:インポッシブル』シリーズなど大作映画を数多く製作するスカイダンス・プロダクションズが立ち上げた、アニメーション部門トップへの就任が判明。同社CEOのデヴィッド・エリソンは、ラセターの雇用は“簡単な決定ではなかった”としながら、アニメーションをデジタル時代へと移行させ、類をみないストーリーテリングで世界中の観客を魅了したラセターの功績をたたえたうえで、「彼は過ちを認めて謝罪した後も、仕事から離れた1年間にわたって、自分の問題を改善するために努力をしてきた」と語っているという。
この決定には反発の声も多く、働く女性の安全と平等な権利のために活動する組織「TIME'S UP」はTwitterなどを通じて声明を発表。「権力を持った男性の横暴なふるまいを認める、崩壊したシステムを助長するものだ」と強い反発を示している。また、映画界におけるジェンダーの多様性を訴え、女性クリエイターの活躍を紹介する Women and Hollywood の設立者メリッサ・シルバースタインも、The Hollywood Reporter に対して「この決定は、勇気をもって立ち上がり真実を明かした、ピクサーで働く女性たちへの恐怖のメッセージとなります」と答えている。
ラセターの退社が決定した後、ディズニー・アニメーション・スタジオのCCOには『アナと雪の女王』の女性監督ジェニファー・リーが就任。ピクサーのCCOには、『モンスターズ・インク』『カールじいさんの空飛ぶ家』『インサイド・ヘッド』などを監督したピート・ドクターが就任している。(編集部・入倉功一)