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スティーヴン・ユァン、村上春樹ワールドの魅力明かす お気に入りタイトルも

スティーヴン・ユァン
スティーヴン・ユァン

 海外ドラマ「ウォーキング・デッド」(2010~)のグレン役でおなじみ、韓国系アメリカ人俳優スティーヴン・ユァンが昨年末、「ハリウッド・コレクターズ・コンベンション」の第13弾「ハリコンNo.13」で来日。イベント終了後、村上春樹の短編小説「納屋を焼く」に基づく新作映画『バーニング 劇場版』(2月1日公開)のインタビューに応じ、村上ワールドの魅力や映画版ならではの見どころを明かした。

【動画】『バーニング 劇場版』予告編

 『オアシス』『シークレット・サンシャイン』などで知られる韓国の巨匠イ・チャンドン監督が、『ポエトリー アグネスの詩(うた)』以来8年ぶりにメガホンをとった本作。原作は、ある秘密の“趣味”を持つ「彼」と、彼と知り合う「僕」、その友人で失踪する「彼女」、3人の登場人物から成る物語で、映画では舞台を現代の韓国に置き換え、大胆な脚色を施したことでも話題だ。ユァンは「彼」に該当するベンにふんし、LA批評家協会賞など数々の映画賞で助演男優賞に輝いている。

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 もともとユァンは「ノルウェイの森」「ねじまき鳥クロニクル」など多くの村上作品を読んでいたと言い、大のお気に入りが「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」。「納屋を焼く」は映画の出演依頼を受けてから読んだそうだ。「初めて読んだときにはミステリー的な側面、雰囲気が素晴らしいと思った。それは村上春樹のスタイルだと思うんだけど、プロット、方向性がはっきり見えなかったとしてもムードだったりを伝える筆致なんだと思う」

バーニング
映画賞を席巻中!

 出演のきっかけは、Netflix映画『オクジャ/okja』で組んだポン・ジュノ監督から「チャンドン監督が君に会いたがっている」と連絡を受けたこと。この時点ではまだ演じるキャラクターは明かされていなかったというが、原作を読んでいる最中に見当がついていたという。「当時の僕の韓国語のレベルというのが主演を張るほどのものではなかったから、助演の方ではないかという現実問題もあったけど、直感で僕が演じるのは『彼』じゃないかと思っていた。実際にチャンドン監督に会いに韓国を訪れた際に、脚本を読ませてもらって物語やキャラクターについて話す中で、『彼』のキャラクターについて意見が合致したんだ。その作業がとても面白かった」

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 演じるベンは、ヒロイン・ヘミ(チョン・ジョンソ)が旅行先のアフリカで出会い、幼なじみの主人公ジョンス(ユ・アイン)に紹介する裕福な青年。社交上手で交友関係も広く、何もかもを手にしているように見えるが、どこか得体のしれない空気をまとった人物。ユァンはこのベンに個人的につながりを感じたそうで、「彼はニーチェが提唱した超人、おそらくそういう存在になりたいのではないか」と分析し、さまざまな哲学者、哲学書を吸収していった。

 映画の見せ場の一つは、何といってもベンがジョンスに秘密の趣味を打ち明けるシーンだ。ベンとヘミがジョンス宅を訪れ、玄関先で飲み、語り合うシチュエーションで、大麻を吸いリラックスしたベンが唐突に「時々、ビニールハウスを燃やすんです」と不可解な話を始める。

バーニング
『バーニング 劇場版』より。ユァン演じるベンが秘密の趣味を打ち明けるシーン (C) 2018 PinehouseFilm Co., Ltd. All Rights Reserved

 「万端に準備を整えてから撮影したシーンなんだ。なんせ監督が『黄昏時、マジックアワーに撮影したい』と決めていたから、おそらく5、6日間ぐらいかかっているんじゃないかな。何時間もかけて準備をするのに、撮影は1時間半ぐらいしかできない。それを毎日繰り返した。大体、3、4テイクは撮っていたけど、日によっては2テイクぐらいしか撮れないことも。鳥の群れが窓に反射して撮り直しになったりね。だけど、僕にとっても魔法のような美しい経験になった」

 なお、本作はNHKでのアジアの映画監督たちが村上春樹の短編小説の映像化に挑戦するプロジェクトの第1弾として製作され、ドラマ版が昨年末に放送されている。ドラマは95分、映画版は148分と約50分尺が異なるが、ユァンはドラマと映画の違いを聞くなり「Oh my god!」と驚愕。見比べてみるのも一興だ。(取材・文:編集部 石井百合子)

村上春樹「納屋を焼く」を実写化『バーニング 劇場版』予告編 » 動画の詳細
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