登坂広臣、俳優としての余裕は一ミリもない
登坂広臣が、映画初出演となった『ホットロード』以来、約5年ぶりに恋愛映画に挑んだ『雪の華』。オファーをもらってから出演の決断をするまで、数年葛藤があったという登坂が、俳優業についての胸の内を率直に明かした。
中島美嘉の名曲「雪の華」をモチーフに男女のピュアな恋愛を描いた本作。登坂は余命宣告された美雪(中条あやみ)から「100万円で恋人になってください」と言われ、何も知らないまま期限付きの恋を始めることになったガラス工芸家を目指す青年・悠輔を演じる。
アーティスト活動を中心に行ってきた登坂が、恋愛映画に出るのは約5年ぶり。その間も『HiGH&LOW』シリーズへの出演はあるものの、俳優の仕事を継続的に行っていたわけではない。
「5年前に『ホットロード』という作品をやらせていただいたとき、お芝居の経験もなく右も左もわからないなか、ただがむしゃらに一生懸命演じました。一回現場を踏んだことは経験にはなりましたが、自分は決して芝居が上手にできたとも思わなかったし、演じることの難しさを肌で感じました。そう簡単に“俳優をやります”とは言えなかった」
芝居を経験したからこその葛藤。初めて声をかけてもらったときより、一歩を踏み出すことにより大きな躊躇が生まれた。
「プロデューサーさんやスタッフさんなど、この映画を作り上げようとする方たちの熱意をすごく感じたんです。だからこそこちらも、その熱意に負けないぐらいの強い心構えが必要だと思いました。最初にお話をいただいてから、決断するまでかなり長い時間がかかりました」
引き受けたからには、アーティストとしてのきらめくような“実績”や“経験”はすべて捨てて芝居の世界に挑んだ。「格好つけている余裕なんて一ミリもなかった」と芝居初経験となった『ホットロード』の撮影を振り返っていた登坂だが、『雪の華』でも「一度経験していたから少しは余裕が生まれるのかなと思っていましたが、やっぱり余裕はなかったです」と苦笑い。
それでも、悠輔という役に真摯に向き合った。不器用でまっすぐなところなど自身との共通点を見つけ出し、メガホンをとった橋本光二郎監督と共に丁寧に役柄を作っていく作業を繰り返した。撮影現場では、台本とは違うが、自然と口から出てしまうセリフもあったとか。悠輔を演じているのではなく、悠輔自身になり切るまで役に入り込めていたという。
「表現者としてチャレンジし続けること」を自身に課しているという登坂。『雪の華』は、彼にとって大きな挑戦の一つになった作品と言えるだろう。(取材・文:磯部正和)
映画『雪の華』は2月1日より全国公開