テレ東の深夜ドラマが充実!共通点は?
「モテキ」「孤独のグルメ」など数々の深夜ドラマの名作を生んできたテレビ東京。今年1月クールも、「デザイナー 渋井直人の休日」(毎週木曜深夜1時~)、「日本ボロ宿紀行」(毎週金曜深夜0時52分~)「フルーツ宅配便」(毎週金曜深夜0時12分~)など充実のラインナップ。3作品の面白さについて、いくつかの共通点と共に分析してみた。
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3作品はいずれも原作があり、映画監督が監督、演出に名を連ねており、一話完結型ならではの見やすさがあある。「渋井直人」は、コラムニスト、漫画家・渋谷直角の漫画が原作で、『マザーウォーター』『東京オアシス』などを手掛けてきた松本佳奈監督が参加。「日本ボロ宿紀行」は、上明戸聡のブログを書籍化した著書を『デイアンドナイト』などの藤井道人監督らがドラマ化。『フルーツ宅配便』は、鈴木良雄の同名漫画が原作。『凶悪』『孤狼の血』の白石和彌、『南極料理人』『モリのいる場所』などの沖田修一らが監督を務める。
「デザイナー 渋井直人の休日」は、デビュー40年にして初の連ドラ単独主演となったベテラン・光石研の熟練の演技がさえ渡る。おしゃれで女性受けもいいが、「モテる」とは言い難い52歳の独身デザイナーを好演。定番スタイルは、ダッフルコートにクラークスの靴。料理もかなりの腕前で、長年培ってきた美的センスも目に楽しい。あこがれの大御所イラストレーターと対面するもイビられ面目丸つぶれになったり、美女が自分に気がありそうと知ってウキウキするも“勘違い”だったり。何かと期待しては裏切られる、の繰り返し。独身生活の楽しさと寂しさがユーモラスに描かれ、ちょっと「イタい」面がリアルな共感を呼ぶ。なおかつ、10年にわたって光石と組み、彼を熟知している松本監督とのコンビネーションによるところも大きい。
元乃木坂46の深川麻衣が主演を務める「日本ボロ宿紀行」は、父の急死により27歳にして芸能事務所の社長を引き継いだヒロイン・春子(深川)と、48歳の一発屋の歌手・桜庭(高橋和也)の営業の旅を描く物語。原作者がブログで「『ボロ宿』というのはけして悪口ではありません。歴史的価値のある古い宿から単なる安い宿まで、ひっくるめて愛情を込めて『ボロ宿』といっています」と記しているように、時代から取り残されたような、しかし味わい深いロケーションが見もの。第1話に登場した宿は、新潟県燕市の「公楽園」。浴槽の劣化した箇所など、“ボロ”に萌えを感じるヒロインを通じて、退廃の美を堪能できる。朝食や夕食が自販機で売られているのもユニークで、春子はトースト(アルミホイルでくるまれて出てくる)を、桜庭はカツ丼を食していた。局の宣伝部によると、原作に登場しない独自のロケ地も登場するという。
「フルーツ宅配便」は、『ロストパラダイス・イン・トーキョー』(2009)、『牝猫たち』(2016)などのデリヘルを扱った映画を手掛けてきた白石和彌監督らが、デリヘルの店長になった主人公を通して、そこで働く女性たちの人生を描くもの。タイトルの「フルーツ宅配便」とは店の名前で、女性たちは、みかん、イチゴ、レモンなどフルーツの名前で呼ばれる。デリヘル業界を描きながら、女優たちのお色気シーンを堪能する趣旨ではなく、むしろ女性向け。毎回、デリヘル嬢、客役など異なるゲストが登場し、シングルマザー、借金を抱える者、整形したい者……デリヘル嬢たちの切実な事情が明らかになっていく。主演の濱田岳、徳永えり、山下リオ、北原里英らデリヘル嬢にふんする女優たちに加え、松尾スズキ&荒川良々の大人計画コンビのキャスティングが絶妙だ。
テレビ東京ではこれまでも映画監督がドラマに参加するケースが多く、昨年4月クールに放送された池松壮亮主演「宮本から君へ」では『ディストラクション・ベイビーズ』の真利子哲也監督が監督、脚本を務めていた。同作は映画化も発表され、真利子監督が続投。今秋の公開を予定している。また、「フルーツ宅配便」に続く4月クールのドラマ24枠で、よしながふみの同名漫画に基づく「きのう何食べた?」の放送が決定しており、映画『嘘を愛する女』の監督を務めたCMディレクター、映画監督の中江和仁が名を連ねている。(編集部・石井百合子)