『未来のミライ』アカデミー賞ノミネート プロデューサーに聞く世界が感じた魅力
細田守監督の『未来のミライ』が第91回アカデミー賞の長編アニメ映画賞にノミネートされた。日本の長編アニメーションにおいて、スタジオジブリ作品以外で初の候補入りとなった驚きと、細田監督の様子を、スタジオ地図の齋藤優一郎プロデューサーが明かした。
日本の長編アニメーションにおいて、ジブリ以外では初の快挙。ノミネート発表の瞬間、細田監督は外で仕事をしていたそうで、齋藤プロデューサーからの電話にも「え? 本当ですか」と驚くばかり。齋藤プロデューサーも「電話をしている僕自身も実はまだ半信半疑な感じで、お互いに驚きあったという感じでした。でも本当に光栄なことだと思います」と振り返る。
細田監督はその後「小さな子どもの日常と成長を淡々と描いたこの可愛らしい作品が、ヒーローを描いた他の作品に混じって選ばれたということに、大きな意味と意義を感じています」とコメントを発表。同作は、受賞は逃したものの第76回ゴールデン・グローブ賞でもアジア作品として初めてアニメーション映画賞にノミネートされており、齋藤プロデューサーも「この作品は、4歳の子どもの成長とその家族の歴史と日常を淡々と描いているだけ。でもそういった日常にある大切な輝きを世界中の皆さんそれぞれが発見してくださった」と両者ともに今回のノミネートを喜んでいる様子だった。
アメリカでは、昨年11月29日より「MIRAI」のタイトルで英語吹き替え版を公開。約700以上のスクリーン規模で封切られ、現在も上映を継続している。また、現時点で世界97(2019年2月時点)の国と地域(公開済みも含む)での配給も決まっており、アカデミー賞ノミネートをきっかけにさらなる広がりを期待する。
海外の反応について齋藤プロデューサーは「世界中の皆さんが、誰しもの日常や家族の中にある喜びや驚き、そしてそこで起こっている奇跡や大切な何かを、この映画を通して見つけ、もしくは再発見してくれているのではないかと感じています」と分析する。「細田さんは自分の家族の中で起こっている喜びや問題意識というのは世界中どこの家族の中でも起こっていて、例えば、自分の家族の問題を解決すること出来たら、それは世界中の家族の問題を解決することにも繋がるのではないか、そういった身近な体験やモチーフを、アニメーションという表現で映画を作り、その機能を使って、世界中の人々と共有したい、一緒に考えていきたいと思って、映画を作り続けてきた」
また当初から『未来のミライ』を「作家・細田守が新たなフェーズに入る作品」に位置付けていたといい「次はものすごいものが出てくる、きっと誰も見たことがない、作家性に満ちあふれた、新しいチャレンジの作品が生まれるに違いないという予感があった。結果、それは更に想像を超えた形で現実のものとなりました」と振り返る。
もし、長編アニメ賞の受賞となれば宮崎駿監督の『千と千尋の神隠し』(2001)以来の快挙となる。くしくも、アカデミー賞ノミネート発表より少し前に、スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーから、本作への応援メッセージがスタジオ地図に届けられていた。そこにはシンプルに「生まれて来てすみません。」と記されており、まさに読む人それぞれの想像を膨らませる“鈴木節”がさく裂したコメントとなっている。
「鈴木さんは僕がこのアニメーション映画の世界に飛び込む、きっかけとなった人。いまも節目節目で相談や話しを伺いに行かせて頂くこともあります」という齋藤プロデューサーは、「鈴木さんは、本質的なことをズバッと一言で表現される方。その言葉には魔法がかかっていて、最後に着く『。』の後には、『なぜなら』や『だから』と言った、その後に続く言葉や解釈を読者に考えさせる力があるんです」と笑みを浮かべた。(取材・文:壬生智裕)
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