バスケット業界を描いたスティーヴン・ソダーバーグ監督最新作、キャストらが語る
スティーヴン・ソダーバーグ監督がNetflixのもとで手掛けた新作『ハイ・フライング・バード -目指せバスケの頂点-』について、出演俳優のアンドレ・ホランド、ザジー・ビーツ、ソーニャ・ソーン、メルヴィン・グレッグ、ビル・デューク、カイル・マクラクランと、脚本家のタレル・アルヴィン・マクレイニーが、2月7日(現地時間)、ニューヨークのAOL開催イベントで語った。
【作品写真】NBAのスター選手がいっぱい!『アンクル・ドリュー』
プロバスケットボールリーグNBAがロックアウト(オーナーと選手の双方に大きな溝が生じ、新労使協定締結に失敗。リーグの業務が公的に停止になること)に入り、コートに立てていない新人選手エリック・スコット(メルヴィン)は、経済的に困っていた。相談を受けたエージェントのレイ・バーク(アンドレ)は、ロックアウト早期解決のため、独自に動き出す。ザジーはレイのアシスタントのサム、ソーニャはレイの同僚マイラ、ビルは少年のバスケットコーチのスペンス、カイルはチームオーナーのデヴィッドをそれぞれ演じた。
ソダーバーグ監督とは、テレビシリーズ「The Knick/ザ・ニック」で5年前にタッグを組んだアンドレ。「僕が彼の誕生日に本をプレゼントし、彼も僕に本のお返しをしてくれたことで親交ができ、共にできるプロジェクトについて話し合うようになったんだ。その頃、ドナルド・スターリング(ロサンゼルス・クリッパーズのオーナーで、恋人との口論の末に黒人差別発言した人物)のテープがリークされたこともあり、人種、スポーツ、政治の交錯について議論を交わしたんだ」。この議論を発展させ、それを基にタレルが脚本を執筆したそうだ。
脚本家のタレルは、撮影前にかなりのリサーチをしたという。「ロックアウトは誰にとって好都合なのか検討してみたよ。選手の利点として描くことも簡単にできたけれど、リサーチを続けていく過程でスティーヴンやアンドレから新たなアイデアを得たんだ。それは、彼らから社会学者ハリー・エドワーズの著書『The Revolt of the Black Athlete』をプレゼントされたときで、僕はその本によって驚かされ、恥ずかしくもなったんだ。有色人種のアスリートが、いかに有色人種であることを基盤にして、(社会の)現状改革や市民的関与を行ってきたかを知らなかったからね」
メルヴィンは、今作の役作りについて「僕の周りには何人かのプロのアスリートがいて、成長期にも多くのアスリートと接してきたから、それらをもとに、アスリートがコート上、あるいはコート外で、どういう様子かをつかもうとしたんだ」と振り返り、演じたエリックについては「19歳というのは、それまでの18年間は子供で、大人になってまだ1年。だけど、大人の決断を要求されることになるんだ。大きな機会を与えられ、その機会によって大金を得るけれど、やっぱりまだ子供だからエージェントのレイにかなり頼ることになるんだ」と説明した。
ザジーは演じたサムを大きな野心を抱いているキャラクターと説明し、「自分の居場所よりも高みの場所に刺激を求める彼女のようなキャラクターが好きだわ」と語る。一方、チームのオーナー、デヴィッドを演じたカイルはこの役を演じるためにポール・アレン(NBAのポートランド・トレイルブレイザーズのオーナー)と共に時間を過ごしたそうで、とても落ち着きがあって、クールな人物だったと振り返った。また、以前から脚本家タレルやソダーバーグ監督のファンだったというソーニャは、一緒に仕事をする機会に興奮したそうで「これまでも比較的強い女性の役にキャスティングされてきたけど、今作のマイラのような役柄は演じたことはなかったわ。彼女は男性が支配する世界で、強い女性として存在しているのよ」とキャラクターを紹介した。
ソダーバーグ監督とは映画『イギリスから来た男』でタッグを組んだビルは、「今作はiPhoneでの撮影という新たな体験だったよ。最も驚かされたのは、ドリーショット(車輪のついたカメラの移動台を利用して撮影するショットのこと)で、車椅子にiPhoneをつけて撮影していたのには驚いたね。優れた俳優陣とも組めて、とても素晴らしい体験だったよ」と撮影を振り返った。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)