フランスと日本合作協定へ前進!?パリで映画協力協定
映画分野において日本とフランスの連携及び交流促進を目的とした日仏映画協力協定が結ばれ、現地時間15日、フランス・パリのフランス国立映画センター(以下、CNC)で交換式が行われた。式には、CNCの代表クリストフ・タルデュー氏と、公益財団法人日本映像国際振興協会(以下、ユニジャパン)の副理事長・椎名保氏が出席し、協定書にサインをして締結させた。
同協定は、CNCとユニジャパンの間で交わされたもので、協力事項は以下の7つ。
1.映画遺産の目録化、修復、デジタル化における経験の交換、及び共通の意義を持つ映画の修復における協働作業の検討。
2.CNCが持つ教師の育成及び学校教育でのカリキュラム作成に関する専門知識の提供。
3.共同プロジェクトを開発・実現しやすくするために両国のプロデューサー同士の会合を段取る努力。
4.海賊版対策。
5.映画の発展のための基本的な手段である初期教育での学生・教員の交流の促進。
6.共同製作作品を普及させるための、配給の改善。
7.日本で行う日仏映画関係者の支援を目的とした映画祭等を活用した協定措置の実施。
実は両者は、第58回カンヌ国際映画祭会期中の2005年5月14日に、ほぼ同内容の日仏映画協力覚書を交わしている。それは合作協定を締結するための第一歩だったはずだが、法の壁などもあり、進展はなかった。
それを仕切り直ししようとする動きとなったのは、2018年の日仏友好160年を記念して開催されている複合型文化芸術イベント「ジャポニスム2018」が2019年2月まで開催というタイミング。
さらに河瀬直美監督を筆頭に、諏訪敦彦監督、黒沢清監督、深田晃司監督、そして『万引き家族』(2018)でカンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞した是枝裕和監督が、カトリーヌ・ドヌーヴ主演『La Verite(仏題・仮)』に着手と、気鋭監督が日仏合作映画で力量を発揮している背景もある。
その際、合作協定が結ばれていないゆえにフランス側の助成や資金を得ることが困難であることを、当事者である彼らがインタビューなどを通して声高に訴えてきたことが、映画業界のトップを動かしたようだ。中でも、深田監督は『淵に立つ』(2016)で第69回カンヌ国際映画祭「ある視点部門」審査員賞を受賞した際に喜びのコメントそっちのけで、壇上で日仏合作協定の早期締結を呼びかけことなどが、痛烈に響いたようだ。
ただし今回の協定は、あくまで協力をうたったもの。さらに国同士ではなく、日本側は映画業界で組織するユニジャパンであり、手放しでは喜べない。ここから日仏合作協定へと発展させるためには、2007年に発効されたユネスコの文化多様性条約に日本が批准することがフランス側の条件の一つに掲げられているそうで、政策にも大きく関わってくる問題が立ちふさがっている。
この日の交換式には、総理特使の萩生田光一議員をはじめ、ユニジャパン理事でもある東宝の島谷能成社長と東映の多田憲之社長、KADOKAWAの角川歴彦会長、一般社団法人外国映画輸入配給協会常務理事の東宝東和・山崎敏社長らも立ち会った。日仏協力協定の未来を握る彼らに大きな期待をせずにはいられないが、椎名氏も協定書を手に「フランス側から大きな宿題をもらったと思っている」と答え、身を引き締めていた。(取材・文:中山治美)