ガス・ヴァン・サント監督が来日 新作にまつわる名優との秘話
19日、映画監督のガス・ヴァン・サントが、新作『ドント・ウォーリー』PRのため約10年ぶりに来日。ヒューマントラストシネマ渋谷で行われた日本最速上映会に出席し、本作を構想しながらも2014年に死去した名優ロビン・ウィリアムズさんとの秘話を明かした。
本作は、交通事故で胸から下がまひしながらも再起した風刺漫画家ジョン・キャラハンさんの自伝を映画化。ウィリアムズさんが、サント監督の『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(1997年)出演時から映画化を構想していた作品で、志半ばで死去した彼の意思を受け継ぎ、ホアキン・フェニックスを主演に迎え、サント監督が映画化した。
ロビンさんから話を受けた時点で、映画のイメージが湧いたというサント監督。「車いす生活をしていて、アルコール中毒、交通事故を起こしたことなど、ジョンのストーリーは知っていました。もしロビンが彼を演じるならうまくいくと思ったんです」と振り返る。
その後、サント監督は、2本の脚本を執筆するも、映画化には至らなかった。なかなか映画化されない状況にキャラハンさんは「そんなに時間がかかったら死んでしまうよ」と皮肉を言ったというが「本当に2010年にジョンが亡くなって、2014年にはロビンも……彼の言うとおりになってしまったんだ」と寂しそうな表情を浮かべる。
ロビンさんが亡くなったあと、彼が獲得した映画化権はコロンビア・ピクチャーズが持っていたというが、紆余曲折を経て、またサント監督のもとに話が舞い込んだ。そこからサント監督は、話の軸を断酒会やグループセラピーに据えて、脚本を再構築し、ホアキンに主演を依頼したという。
上映会の後半では、サント監督へのティーチインを実施。観客のなかには、銃乱射事件を起こす高校生たちの一日を追った『エレファント』(2003)を、まさに高校生のころに観てサント監督の大ファンになったというファンの姿も。「少年に向けた作品を作る予定はありますか」と問われたサント監督は「やるかどうかわからないな」と苦笑いしながら、「今、パリのファッションウィークについての脚本を書いていて、それは少年と父親の話なんです」と新作の構想を明かしていた。(磯部正和)
映画『ドント・ウォーリー』は5月3日よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開