スパイダーマンの動きを自ら再現!『スパイダーバース』日本人クリエイターが明かす製作秘話
別次元のスパイダーマンが一堂に会する新作アニメーション映画『スパイダーマン:スパイダーバース』(3月8日全国公開)に、CGアニメーターとして参加した若杉遼(わかすぎ・りょう)がインタビューに応じ、製作の裏側や海外でのキャリアについて語った。
カナダ・バンクーバーにあるソニー・ピクチャーズ・イメージワークスに所属する若杉は、“CGキャラクターアニメーター”として本作に登場するキャラクターのアクションなどの製作を担当。スパイダーマン特有のスピーディーなアクションを再現することが難しかったと語る若杉は、“実際にスパイダーマンの動きを体で表現する”方法を採用し、アニメーション作りに臨んだという。
「説得力のある動きを作る時は、腰の位置だったり、肩の曲げ方など、自分で動いて確認した方が、気づきがあって作品に応用しやすいんです。動いてみることも、アニメーターとしての大切な仕事でもあります。ただ、頑張りすぎてしまって、時々ケガをしてしまう人もいますけどね(笑)」
さまざまな次元で活躍するスパイダーマンの共演も本作の見どころ。個性豊かなスパイダーマンたちのなかでも、若杉はスパイダー・ハム(ブタにそっくりなスパイダーマン)とペニー・パーカー(ロボットを駆使して戦う少女)を描くことに苦労したという。「マイルス・モラレスやピーター・パーカーはある程度人間の動きをしていて、自分で動きを確認してもそこまで苦労せずに参考にできたのですが、アニメーション色が特に強いペニー・パーカーや、昔のカートゥーンのような動きをするスパイダー・ハムは、自分の動きから参考にできる要素が少なく、(原作コミックや他のアニメーション作品からの)リサーチが必要になってきました」
高校卒業時からハリウッドでの映画製作を志望していた若杉は、アメリカの美術大学に入学後、ピクサー・アニメーション・スタジオでアニメーターとしてのキャリアを歩み始める。「(ピクサーの)アニメーターは、一人ひとりが独自の哲学を持っていて、『どうやってやれば、観客に伝わるか』と常に観客の目線でいるんです」と当時を振り返った若杉は、ピクサーでの経験を“人生のターニングポイント”と表現。世界各国のトップクリエイターと仕事ができる環境も大きな刺激になったそうだ。
そんな若杉は、CGアニメーターとして活躍する傍ら、個人ブログやアニメーターを志す人向けのオンラインスクールの講師を務めるなど、自身の経験をアウトプットする活動も行っている。今後は絵コンテ担当やアニメーション映画の監督にも挑戦したいといい、「今後は恐れずに行動したいと思っていて。今後の動向次第なのですが、今中国(の映画市場)がすごく伸びているので、挑戦してみるというのも選択肢の一つです」と展望を明かしていた。(取材・文:編集部・倉本拓弥)