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吉田羊、フランスで主演作をお忍び鑑賞後に思わぬ賛辞

(写真左から)松永大司監督、シネマテーク・フランセーズのジャン=フランソワ・ロジェ、吉田羊(フランス・パリのシネマテーク・フランセーズにて)
(写真左から)松永大司監督、シネマテーク・フランセーズのジャン=フランソワ・ロジェ、吉田羊(フランス・パリのシネマテーク・フランセーズにて)

 フランスで行われている回顧上映「日本映画の100年」で、松永大司監督『ハナレイ・ベイ』の上映がパリのシネマテーク・フランセーズで行われ、同施設のジャン=フランソワ・ロジェが「これは吉田さんの映画。素晴らしい演技」と主演の吉田羊を絶賛した。会場には、プライベートで現地入りしていた吉田がお忍びで鑑賞していたのだが、思わぬ賛辞を受け感激しきりの様子だった。

 同回顧上映は、日仏友好160年を記念して開催されている複合型文化芸術イベント「ジャポニスム2018」の一環として行われているもの。回顧上映は3部構成となっており、『ハナレイ・ベイ』は第3部の現代監督特集に選ばれている。同作は村上春樹の短編小説が原作で、ハワイで命を落とした息子の死の意味を、10年間、現地に通って自問したシングルマザー・サチの葛藤を描いたもの。今回がフランス初上映だったことから、吉田は現地の観客と一緒に上映を楽しもうと会場を訪れたという。

『ハナレイ・ベイ』の上映の様子
『ハナレイ・ベイ』の上映の様子(パリのシネマテーク・フランセーズにて)

 トークイベントの司会を担当したロジェは、同施設のプログラム・ディレクターとして知られ、回顧上映の選出も担当している。トークでも吉田の演技に触れていたが、本人が来ていると知るや、「直接、感想を伝えたい」と上映後に吉田のもとにあいさつに訪れた。

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 ロジェは「最初は息子を亡くして同情的になるのですが、それだけではない(母子の確執という)一面が見えてくる。観客が感情移入するのには時間がかかる役で、演じるのは難しかったと思います。この女性はどうなったらいいのだろう? そう考えさせられ続ける映画は、そうないと思います」と語りかけると、吉田は胸一杯といった様子で「ありがとうございます」と笑顔を見せていた。

松永大司監督、ジャン=フランソワ・ロジェ、吉田羊
談笑する(写真左から)松永大司監督、ジャン=フランソワ・ロジェ、吉田羊(フランス・パリのシネマテーク・フランセーズにて)

 一方、舞台あいさつを行った松永監督も今回は日本からではなく、文化庁が行っている新進芸術家海外研修制度の研修生として滞在しているアメリカ・ロサンゼルスから現地入りした。

 現在は研修の傍ら、LDHとショートショート フィルムフェスティバル&アジア(SSFF & ASIA)によるコラボレーションプロジェクト「CINEMA FIGHTERS project」第3弾として、三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEのボーカル・今市隆二が出演する短編の制作準備に入っているという。そのスタッフを、『ハナレイ・ベイ』のアメリカ・ハワイロケで知り合った映画関係者が紹介してくれたそうで「今までの積み重ねが、先へつながっていることを実感する」という。

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 同時に、ハリウッドでの成功を夢見る人たちが世界中から集まっている場所だけに「日本人であるお前はここで何を作りたいのだ?」という問いを常に突き付けられているという。松永監督は「映画の技術だけでなく、人間的な成長をしていくためにも、良い経験になっていると思います。そもそも、もう少し早く来るはずがアーティストビザを取得するのに時間がかかってしまった。生きていくのって簡単じゃないんだなというのを改めて痛感しています」という。

 報じられている通り、吉田も今年1月から新事務所に移籍したばかり。奇遇にも本作後に心機一転歩み始めた監督と主演女優が、上映をきっかけにパリで交友を温めた日となった。(取材・文:中山治美)

「日本映画の100年」は3月19日(現地時間)までシネマテーク・フランセーズなどで開催。松永大司監督は『トイレのピエタ』(2015)も選出されている。

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