『斬、』塚本晋也監督に芸術選奨文部科学大臣賞
映画『野火』(2015)、『鉄男』(1989)などで知られる映画監督の塚本晋也が、平成30年度(第69回)芸術選奨文部科学大臣賞を、映画部門において受賞することが明らかになった。
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塚本監督は昨年、池松壮亮と蒼井優をキャストに迎えた、自身初の時代劇『斬、』を発表。贈賞の理由として「一貫して脚本、美術、撮影、編集、出演を兼ねた映画作りをしているが、制約の多い時代劇の『斬、』においてもそのスタイルを貫き、映画を志す者に刺激を与え続けている。一方で、日本映画史上の時代劇に敬意を払いつつ、『人を斬る』ことの意味を通じ、今までの時代劇には見られない『生と死』を巡る哲学的な考察に踏み込んでいる。それは正に現代社会を撃つことにほかならず、時代を超えた塚本映画の到達点となった」と評価を受けた。
同賞は、文化庁が主催する芸術家に対する顕彰制度で、古くは成瀬巳喜男、溝口健二、市川崑などの名匠たち、また塚本監督が俳優として参加した『シン・ゴジラ』(2016)の庵野秀明も受賞している。授賞式は12日に行われる。
『斬、』は、開国か否かで日本が揺れ動く江戸時代末期のある農村を舞台に、人を斬ることに疑問をもつ浪人・杢之進(池松)や、村娘のゆう(蒼井)が、京都の動乱に参戦する過程で村に立ち寄った剣の達人・澤村(塚本晋也)との出会いを機に、時代の波に翻弄されていく姿を描く。
第75回ベネチア国際映画祭コンペティション部門をはじめ、各国映画祭に出品。第33回高崎映画祭で最優秀作品賞、最優秀主演男優賞を受賞し、第73回毎日映画コンクールで男優助演賞受賞ほかに輝くなど、国内外で賞を受け、渋谷・ユーロスペースでは15週にわたるロングランを続けている。(編集部・入倉功一)