『バンブルビー』監督、トランスフォーマーのデザインも変更!80年代こだわりの理由
映画『バンブルビー』で『トランスフォーマー』シリーズを、アクションの迫力はそのままに少女と地球外生命体の絆を描く感動作へと昇華させたトラヴィス・ナイト監督が、温かみのあるオートボットのデザインや作品に込めた思いを語った。
本作の舞台は、バンブルビーが、ある使命を帯びて降り立った1987年の地球。彼の故郷サイバトロン星における激戦で幕を開け、オプティマス・プライムをはじめとするトランスフォーマーたちは、1980年代のアニメ「戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー」や、当時のオモチャを基本とした第一世代のデザインで登場する。
「もともと1980年代半ばに誕生したシリーズだし、お気に入りのアニメだったので、そうした要素は絶対にこの作品に入れたかったんです。当時のデザインはシンプルにして大胆。トランスフォーマーのシルエット、色使い、フォルムにいたるまで独特で記憶に残るものでしたから」というナイト監督。そのため本作では、マイケル・ベイ監督版から一転、どこか温かで丸みのあるデザインにリニューアルされた。
「でもデザイナーからは、どうしても前の『トランスフォーマー』シリーズに近いデザインがあがってきましたね。映画の冒頭でバンブルビーが戦うブリッツウィングなんか、最初はかなり過去シリーズのイメージに近いフォルムでした。でも、80年代の姿こそが僕にとってのトランスフォーマー。そこで、当時のおもちゃを見せながら『今のじゃダメだ、これと同じようにしてくれ!』ってお願いしました(笑)」
そう語るナイト監督はもともと、古代日本が舞台の監督作『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』をはじめ、味わい深いストップモーションアニメの世界で活躍する実力派アニメーター。本作でも、機械であるバンブルビーの感情を豊かに表現してみせ、孤独を抱える少女チャーリー(ヘイリー・スタインフェルド)と、友情を育みながら成長していくさまを丹念に描いた。
「人間の感情やふるまいをよく観察して、絵や人形、そしてCGなどを使って、感情を持った生命を生み出すのがアニメーターの仕事ですから。ただバンブルビーの場合、表情なんかを表現するパーツがあまりない。目と耳だけを使って、声を失った彼の感情を伝えるのは、僕にとっても挑戦でした」
そんなナイト監督が、最も本作に影響を与えた映画として挙げたのが、スティーヴン・スピルバーグ監督の『E.T.』(1982)。「僕が初めて泣いた映画です。少年と異星人の美しい関係は、この映画に通じるものがある。ほかにも『となりのトトロ』(1988)、『アイアン・ジャイアント』(2000)、『ヒックとドラゴン』(2010)といった作品で、異質な存在との出会いが少年少女の世界を広げるさまを描いているように、この映画もバトルだけではなく、ハートを持った映画にしたかった」
もちろん「子供のころ、おもちゃ同士をぶつけて遊んだ」感覚を大事にしたアクションシーンも見どころ。しかし、ナイト監督にとっては、何より伝えたいのは温かなメッセージだ。「孤独で喪失感を抱えた存在同士が、お互いの出会いによってそれを乗り越え、再生していくのが僕の映画。大切な人と出会い、友情や愛の意味を知れば、人は癒されるし、前進できると思う。それは、実際に僕の人生で起きたことでもあるんです。立ち止まっているチャーリーとバンブルビーがお互いを支え合い、共に再生していく。それがこの映画なんです」。(編集部・入倉功一)