クロエ・グレース・モレッツが同性愛者を演じた話題作、監督が語る
人気女優クロエ・グレース・モレッツが主演し、昨年のサンダンス映画祭で審査員賞を受賞した注目作『ミスエデュケーション』について、デジレー・アカヴァン監督が、3月2日(現地時間)ニューヨークのAthena Film Festivalでの上映後Q&Aで語った。
本作は、作家エミリー・M・ダンフォースの原作を、アカヴァン監督が映画化したもの。事故で両親を失った高校生のキャメロン(クロエ)は、プロムクイーンと性交しようとした現場を友人に目撃されてしまう。キャメロンが同性愛者であることを知った叔母のルースは、同性愛者を異性愛者に転換するための治療を行う全寮制の治療施設に彼女を送り込む。
500ページの原作を最終的に約200ページ以下の内容にまで絞った、今作の脚色は想像していたよりも、かなり難しかったとアカヴァン監督は語る。「主人公キャメロンの11歳から17歳までを描いているの。もともと脚本を執筆する過程自体が苦手で……。でも今作は、共同製作者でもあるセシリア・フジュエレが構成の大部分を手伝ってくれたわ。映画として成り立たせる上で、コメディーと悲劇のバランスをいかに図って描くかが重要だったの。そのために原作から取り除いた部分もかなりあったし、わたしたちが(アイデアを出して)新たに書き足した部分も結構あるわ」
当初は、治療施設の先生役に有名な俳優をキャスティングし、それを基に、製作資金を集めようと考えていたという。「最初の4~5か月は有名な俳優をキャスティングしようとしたけれど、治療施設の先生役は劇中で出演時間がそれほど多くなく、ほとんどの俳優に断られてしまったの。でもある日、キャスティング・ディレクターから、クロエがあなたに会いたがっていると連絡がきたのよ。わたしたちは彼女にオファーさえもしていなかったから、驚いたわ」
ただその頃、彼女が出演していた『イフ・アイ・ステイ 愛が還る場所』のような映画を観客が今作にも求めていたら、観客を満足させることはできないのではないかとアカヴァン監督は考えてしまったそうだ。「でも実際に彼女に会ってみると、彼女なら余裕でこの役をできると思ったわ。だって、とても知的で、目の前で演じてもらったときも、すぐにこの役に入り込むことができたの。そして、彼女をキャスティングしたことで一挙に製作資金が集まったのよ」と想定外の展開だったことを明かした。
話題のセックスシーンについては「セックスは自分の想いの伝達だと考えているの。だから、よく映画で描かれているものは、それをうまく伝達できていないように感じていたわ。もしカメラがそのままセックスしているキャラクターにとどまっていたらどうなるかということを、今作のセックスシーンに当てはめて考えてみたの。それから、それぞれのキャラクターが、そのシークエンスの過程をどういった心境で演じていくかを考えていったわ。劇中で最初の車中でのセックスシーンも、プロムナイトのセックスシーンも、一度スタッフには現場でセットアップ(撮影準備を)してもらってから、後ろに隠れてもらい、人けのない状態でクロエには演じてもらったわ」とこだわりを語った。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)