佐藤浩市&渡辺謙、原発事故を描く映画への覚悟
俳優の佐藤浩市と渡辺謙が17日、都内で行われた映画『Fukushima 50』(2020年公開)クランクアップ会見に出席。二人は2013年公開の『許されざる者』以来、約7年ぶりの共演となるが、福島第一原発の事故を取り扱った難しい題材に、並々ならぬ決意で臨んだことを明かした。
本作は、2011年3月11日に起こった東日本大震災による福島第一原発事故に迫った門田隆将のノンフィクション「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発」を、『空母いぶき』『沈まぬ太陽』などの若松節朗監督が映画化。佐藤は福島第一原発1号機、2号機当直長・伊崎利夫を、渡辺は福島第一原発所長の吉田昌郎を演じる。
佐藤は「この映画で扱ったことは、絶対に忘れてはいけないこと。それを我々がメッセンジャーとしてどう伝えるか。劇場から出た人たちが、行き交う人々を見て、どういう思いを抱くのか……そのことを大事に撮影しました」と熱い思いを述べた。
一方の渡辺も、本作のオファーを受けたときは「非常にハードルの高い作品になるのは間違いない」という覚悟があったことを明かすと、吉田所長という役柄について「僕らはエンターテインメントの世界で生きている人間なので、吉田所長を通して、どうエンタメに昇華していくことができるのか見えてこず、なかなか踏み出せなかった」と心情を吐露。
それでも渡辺は、伊崎という人物を中心に据え、彼を取り巻く人々の人間模様を描く構成ならば映画として成立すると思い、一歩進むことができたという。そこには「佐藤浩市という素晴らしい俳優が立ってくれたことが大きい。僕は彼を頼りに吉田をやらせていただきました」と佐藤への全幅の信頼があった。佐藤も渡辺に対して「本当に信頼できる先輩。実は年は一つしか違わないのですが、彼には風格が漂っている」と称賛を送ると「言葉が正しいかはわかりませんが、戦友のような方で安心して作品に臨めました」と語った。
「(事故から)まだ8年なのか、もう8年なのか、思いは人それぞれ」と語った佐藤は「是か非かではなく、未来に生きる人たちに何が必要で何が不要なのか、それぞれが感じてほしい」と作品に込めたメッセージを伝える。
渡辺も「誤解を恐れず話しますが、僕が『硫黄島からの手紙』という映画をやったとき、自分を含めてこの国の民意は理論的に検証して、後世に何を残していくかを考えることがあまり上手ではないと感じた」と問題提起すると、本作を「原発が良いか悪いかという問題ではなく、事実を論理的に検証し、未来に向けてどうするべきかを判断する材料にしてほしい」と語っていた。(磯部正和)