主演俳優のキャスティングに1年半 『Girl/ガール』監督が明かす製作秘話
第71回カンヌ国際映画祭でカメラドール(新人監督賞)ほか3冠を受賞した映画『Girl/ガール』を手がけたベルギー出身のルーカス・ドン監督が来日し、22日に新宿武蔵野館で行われた本作のジャパンプレミアに登壇した。
ドン監督が長編デビューを果たした本作は、バレリーナになるという夢に向かって刹那的に今を生きるトランスジェンダーの少女ララと、いまにも壊れてしまいそうな娘を必死に支える父の思いをセンセーショナルな描写で切り取ったドラマ。
18歳のとき、バレリーナになるために奮闘するトランスジェンダーの少女の記事を目にしたというドン監督は、「いつも他者のイメージに合わせて生きてきた僕は、あるがままの自分でいるために戦っている少女の生き様を知り衝撃を受けました」と製作の動機を明かす。
主人公ララを演じた俳優のヴィクトール・ポルスターは、アントワープ・ロイヤル・バレエ・スクールに通う現役のトップダンサー。ドン監督は、500人を超える候補者の中から彼を選んだことについて、「この映画を作るにあたり、ララのキャスティングは難航しました。なぜなら、必要な資質がたくさんあったから」と振り返った。
ララには「踊れるダンサーであること」は前提として、15歳という年齢でありながら、ほぼ全編に出演し作品を担う必要があった。さらに、キャラクターをエレガントかつリスペクトを持って演じることも要求された。その条件を満たしたのがヴィクトールだ。ララ役のキャスティングに1年半掛かったドン監督にとって、ヴィクトールとの出会いは「入ってきた瞬間、惹きつけられる力を感じた」と運命的だったという。
バレエの振り付けを担当したのは、森山未來とタッグを組んだ舞台でも知られる天才振付師シディ・ラルビ・シェルカウイ。劇中では、ララの表情や体にフォーカスしたカメラワークが採用されており、ドン監督は「振り付けよりも、踊りが肉体にどのような影響を与えるのかを撮りたかった」と演出意図を明かしていた。(磯部正和)
映画『Girl/ガール』は7月5日より新宿武蔵野館ほかにて全国公開