杉野遥亮、初の時代劇に「親孝行できた」
映画『春待つ僕ら』『L・DK ひとつ屋根の下、「スキ」がふたつ。』などで人気急上昇中の俳優・杉野遥亮が、憧れの先輩・松坂桃李の主演作『居眠り磐音』(5月17日全国公開)で、初の時代劇に挑んだ。これまで青春ものが多かった杉野にとって、本作は老若男女を問わないジャンルだけに、常に応援してくれた両親に対して「親孝行ができる作品に出会えた」と喜びもひとしお。そんな家族思いの杉野が、緊張感漂う撮影現場で学んだ役者としての覚悟を語った。
本作は、シリーズ累計2,000万部を突破した佐伯泰英の時代小説を『超高速!参勤交代』『空飛ぶタイヤ』などの本木克英監督が映画化した時代劇エンターテインメント。幼なじみの坂崎磐音(松坂)、小林琴平(柄本佑)、河出慎之輔(杉野)は、江戸勤番を終え、3年ぶりに九州・豊後関前藩に戻ってきた。ところが、磐音と琴平の妹・奈緒(芳根京子)との祝言を控えていたある日、予期せぬ事件が巻き起こり、磐音は二人の幼なじみを同時に失ってしまう。
慎之輔の妻・舞(宮下かな子)が「不貞を犯した」という噂から、幼なじみ三人に降りかかる壮絶な悲劇。前半の山場となるこのシーンで、狂乱する慎之輔を見事に演じ切った杉野は、「慎之輔は1本筋が通っていて、真面目すぎるくらい純粋な男。それゆえに、妻に真実を聞く勇気がなかったのでは?」など自分なりに思いをめぐらせながら気持ちをつくり、撮影に臨んだ。ところが、「柄本さんのお芝居がすごすぎて。今まで感じたことのない迫力と思いが伝わってきて、それに乗っからせてもらったところが大きいです。慎之輔の感情そのままにグサグサと心に刺さりました」と振り返った。
初の時代劇、柄本の鬼気迫る演技、そして事務所の先輩でもある憧れの人・松坂との共演。杉野にとって本作は、俳優として学ぶべき点が多々あったと言葉をかみしめる。「殺陣や所作の難しさ、動きが制限される衣装など、いろいろな発見があって楽しかったです。機会があれば、また時代劇に出たいなと思ったし、かつらも結構似合っていたでしょう?(笑)」と手応え十分。その一方で、「松坂さんは、かっこいい瞬間がたくさんありました。完成作品を観て、『磐音と松坂さんがこんなにもリンクしていたんだ』と気付いたときは、もうたまらなかったです。内面から出てくる本当のかっこよさとはこういうことなんだと。柄本さんとの対峙も貴重な経験だったので、これらを全て持ち帰り、将来の糧にしたいです」と目を輝かせる。
もともと、松坂に憧れてこの世界に飛び込んだという杉野。磐音でなくとも松坂は、杉野にとって偉大なヒーローだが、父親の支えなくして今の自分を語れないとも主張する。「困難にぶち当たったとき、必ずヒントを差し出し、導いてくれたのが父でした。そういう意味では、自分にとってのヒーローは父かもしれません」とニッコリ。「ただ、逆に母はすごく心配だったんでしょう、芸能界に入ることにも猛反対していました。だから、早く結果を残して『安心させてあげたい』という思いは常にありますし、今回、時代劇に出演することができて本当によかった。やっと親孝行できた気がします。おばあちゃんにも観てもらえますしね」と感慨深げな表情を見せた。
「まだまだ自分は白に近くて、いったい何者なのかを探っている状態」と語る杉野。「今回も大きな挑戦でしたが、それを繰り返していくことによって、見えてくるものがあると思っています。常に走り続けないと!」。キラキラした瞳の奥に、俳優として生きていく覚悟が見えた。(取材・文:坂田正樹)