アーカイブだけで1,000時間を編集したアポロ・シアターのドキュメンタリー制作秘話!
トライベッカ映画祭(TFF 18th)のオープニングナイトを飾った、アポロ・シアターを題材にした注目作『ジ・アポロ(原題)/ The Apollo』について、プロデューサーのリサ・コルテス、編集を担当したジョン・スティーヴン・フィッシャーとジーン・ツィエンが、4月27日(現地時間)、上映後のQ&Aで語った。
オープニングはアポロ・シアターのドキュメンタリー!トライベッカ映画祭
アメリカ音楽史を語る上で欠かせないニューヨーク・ハーレムにある伝説的クラブ「アポロ・シアター」。出演した歌手には、マイケル・ジャクソン、ジェームス・ブラウン、アレサ・フランクリンなど世界的スターが名を連ねる。本作は、彼らのパフォーマンスのアーカイブ映像や、タレントをスカウトするラルフ・クーパー、シアターのツアーガイドのビリー・(ミスター・アポロ)・ミッチェル、そしてシアターオーナーのフランク・シルマンなどシアター経営陣へのインタビューなどを含めて、アポロ・シアターの歴史をたどるドキュメンタリー作品。映画『ぼくと魔法の言葉たち』のロジャー・ロス・ウィリアムズがメガホンを取った。
今作を手掛けた理由をリサはこう語る。「わたしたち製作陣のほとんどは、アポロ・シアターを訪れたことがあったけれど、いざアポロ・シアターの歴史を調べてみると、単にアマチュアナイトやアーティストを集めたパフォーマンスだけが行われてきたわけではないことがわかったの。黒人のアートは抑圧や葛藤から生まれていて、そのアートが人の心を動かすということを、監督のロジャーは今作を通して描きたかったの」
シアターがオープンした1934年から現在までのアーカイブ映像は1,000時間もあったそう。「アーカイブ映像はたくさんあって、僕らがロジャーと(映画の)初編集をしたときは、アーカイブ映像部分だけでおよそ4時間もあったんだ。著名なアーティストでもその半数はカットした。僕らは、映画のテーマに合わせて編集していったんだよ」とジョンは振り返った。
アーカイブ映像だけでなく、多くのアーティストへのインタビューが含まれているが、リストアップした人の多くは、スケジュールの都合などで、なかなかインタビューができなかったそうだ。「中には1年待ってようやくインタビューできたアーティストもいたほどなのよ。ジャンルごとに、たくさんのアーティストにインタビューをするつもりだったから、首を長くしながら撮影を進めたわ。映画プロデューサーをする前は音楽関係の仕事をしていたから、その当時のコネを使って連絡が取れたアーティストも多かったし、今年のサンダンスで上映してから、(その反応が良かったため)協力してくれたアーティストもいたわ」とリサは明かした。あらゆる角度からアーティストにアプローチをかけていたようだ。
トライベッカ映画祭でプレミアが行われたばかりの本作。今後のプロモーションについて、リサは「より多くの人に鑑賞してもらえればと思っている。今作でわたしたちはHBOドキュメンタリーとタッグを組んでいて、10月の公開の前に、より多くの映画祭に出品しようと思っているわ」と答えた。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)