『リトル・フォレスト』料理シーンは全て吹替えなし!キム・テリの記憶に残った一品は?
五十嵐大介の人気コミックを韓国で映画化した『リトル・フォレスト 春夏秋冬』には、トッポギやマッコリ、蒸し餅といった食欲を刺激する料理の数々が登場する。橋本愛主演の日本版とは異なる、韓国ならではのメニューも魅力となっているが、その料理は全て女優のキム・テリ自らが吹き替えなしで調理したものだ。
都会の生活に疲れて故郷に戻ったヒロインのヘウォン。そんな彼女が、農業や料理を通して新たな生き方を模索する姿を美しい四季の映像とともに紡ぎ出した本作は、観客の心に優しく寄り添う休息のような作品だ。劇中では色とりどりの料理がヘウォンの手によって作り出され、もう一つの主人公と言っても過言ではないほど大切な役割を果たしている。
それらの料理はすべて、『お嬢さん』で一躍脚光を浴びたヘウォン役のキム・テリが実際に調理している。作った料理のなかで一番記憶に残っているのは、テリいわく「すいとん」だそう。「そしてトッポッキは思ったより難しかったですね。マッコリは撮影が始まる前に仕込みましたが、監督が上手なんです。私は失敗しましたが(笑)いずれにせよ、家でもチャレンジできるということを知ったこと自体が面白かったです」
テリが「天ぷらを食べる時のサクサクッという音が、とても好きでした(笑)」というように、料理は美しい見た目だけでなく、音でも観客を楽しませてくれる。天ぷらの材料には、おなじみの春菊と珍しいアカシアの2種類が採用された。気になる味については、「アカシアの天ぷらは一応、食べられますが少し苦いですね。天ぷらの衣の甘み程度しか感じられず、そんなに甘くはありません。春菊の天ぷらはとてもおいしかったです。アカシアの天ぷらは見た目が本当にステキですね」と振り返っている。
ヘウォンとともに食卓を囲む幼なじみのジェハ(リュ・ジュンヨル)や、ウンスク(チン・ギジュ)との軽快なやりとりも見どころだ。この三人の微妙な三角関係も気になるところだが、ヘウォンとジェハがただの友達なのかについては「わかりませんね」というテリ。「よくわからないように、お互い演じていたようです。観客の受け取り方次第ですね」とその答えは観客にゆだねられた。
三人がお酒を飲むシーンもあるが、実際は全員あまりお酒が飲めないそうで、現場ではおしゃべりをしたり、からかいあったりして過ごしたそう。「あれこれと話すのが、とても楽しかったです。同じ職業で関心があることも同じだったので。今は思い出せないような話題についても、たくさん話しましたね。普段、どう過ごしているのか、最近、何が面白かったのか、映画の話や出演した他の作品の話もしました。互いに応援し合っています」
劇中、あらゆるものを都会に残して田舎に戻ってきたヘウォンに、ジェハは「それで問題が解決できると思うのか?」という耳が痛い言葉を投げかける。それは、ヘウォンにとって自分の現在地を再確認させる、大きな意味を持った言葉だ。
「ヘウォンは『私は一生懸命、生きている』という思いで視野が狭くなり、自分自身を追い込んで生きてきたのだと思います。実際には、自分の生き方を貫けなかったんです。都会に行こうと考えたのは、母親がいなくても自分は生きていけるという思いからで、自分の進むべき道ではなかったのかもしれません。自分は、がむしゃらに生きてきて、どんな生き方をしたいのかということから目を逸らして逃げ続けてきたんだと、悟った瞬間なのかもしれません」
撮影を通して、田舎暮らしや農業への関心が芽生えたというテリ。最初は「将来の夢が決まった! 農業だ」と思ったそうだが、大変な夏の撮影を通してその思いは断たれることになった。「『やっぱりダメだ』と諦めました。『これはダメだ。私が進むべき道じゃない』と(笑)生まれて初めて夏バテしましたが、とてもキツかったですね。腰をかがめてばかりで、すっかり弱りきって死にそうでした。特にトウモロコシ畑のシーンは死ぬほど暑かったのに、映像ではそれほど暑く見えなくて、とても残念です(笑)」。自然を相手にした大変な撮影環境だったが、そうしたキャストやスタッフの努力があったからこそ、どのシーンでも四季の豊かな表情に目を奪われる。(編集部・吉田唯)
映画『リトル・フォレスト 春夏秋冬』は公開中