『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』ハリウッド版ギドラを生んだもの
映画『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』に登場する、モスラ・ラドン・キングギドラなど、ハリウッドデビューを飾る怪獣たちに込められたメッセージやモチーフを、メガホンを取ったマイケル・ドハティ監督をはじめとするスタッフが語った。
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「彼らは各々が自然の一部を体現しています」というドハティ監督は、東宝『ゴジラ』シリーズと同じくらい自然を愛して育った。それだけに「ゴジラは海底から現れた“水”、ラドンは溶岩から現れた“火”、モスラは地球と自然の象徴です。彼らはそうした自然の要素とつながっている。ただの巨大モンスターではなく、神として描きたかったんです」と語る。
歴史を紐解けば、神話や伝説のそこかしこにモンスターの存在が残っている。「例えば、ギドラには明確な出自があります。神話の九頭蛇(ヒュドラ)です。古代の神話に登場するヒュドラを見て、ギドラの基にしました」というドハティ監督。ギドラが「東洋の龍」であることも大事だったという。「頭や顔の形、それにツノや身体中を覆うウロコ。西洋の龍と違って明らかに東洋風です。見事なハイブリッドだ」
本作の絵コンテと怪獣デザインを務めたマット・オールソップも、怪獣たちを古代の神々のように描いたと証言。同時に、自然を象徴することも重要だった。「ラドンは煙がたちこめ灰が空から降り注ぐ火山の上に立っています。 ギドラはこちらを威嚇するようなポーズで氷の壁に閉じ込められていて、(復活後は)巨大な嵐の中に現れる。彼らと、周囲の環境に影響を与えることで、よりインパクトが生まれたんです」
そんな怪獣たちのなかでも宿敵としてゴジラに匹敵する迫力を見せるのが、やはりギドラだろう。プロダクションデザイナーとして世界観の設計を手掛けたスコット・チャンブリスは、世界的写真家・杉本博司氏の作品が、ギドラのデザインを決定するうえで重要な鍵になったという。「杉本博司さんの美しい稲妻の写真を本で見たんです。時間経過と共に稲妻の細かな部分が見えるような、それは肉眼では見えないもの。雷を力にして吐き出すギドラのことを考えていると、その写真を思い出しました。稲妻が身体中を覆う姿がね」
また、製作総指揮のバリー・ウォルドマンは、ギドラの3つ首それぞれに別の個性を与えることにしたと振り返る。「これが作品のレベルを上げた。普通は竜の首をひとつ考えて3倍にするだけだが、今回はそれぞれ特徴がある。“どんな個性にする?”って考えるプロセスは楽しかったですね」
そんな怪獣たちの激突は本作の最大の見どころだ。「皆が好きな“ゴジラ”を詰め込みたい。大量のアクションと怪獣バトル。人類も巻き込んでね」というドハティ監督は、同時に「でも何より、それら全ての背景に、ゴジラが持つ風刺性を捉えたかったんです」とも語る。「成長して知ったんです。ゴジラには見えない所に神話性があると。それが意味を与えている。ゴジラが生まれた背景を紐解くためのね。原爆投下後の日本人の秘めた声を発するためにゴジラは創られた。それがほろ苦い風刺としてゴジラの側面になっていると思うんです」(編集部・入倉功一)
映画『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』は5月31日より全国東宝系で公開