『あした世界が終わるとしても』櫻木優平監督、初長編作品に込めた思い
櫻木優平監督のアニメ『あした世界が終わるとしても』が現地時間13日、フランスで開催中の第43回アヌシー国際アニメーション映画祭の長編コンペティション部門で上映された。午前10時半の早い上映ながら、約945席のメイン会場はほぼ満席となる盛況ぶりで、舞台あいさつを行った櫻木監督は「初めて監督をやらせていただいた作品で、このような場に来られて光栄です」と喜びをかみしめていた。
同作は、相対する2つの日本を舞台に、相対する人物たちが日本の危機を救うために共闘し、独裁政権を企む者たちに立ち向かうアクション・ラブストーリー。岩井俊二監督『花とアリス殺人事件』(2015)や宮崎駿監督『毛虫のボロ』(2018)にCGスタッフとして参加していた櫻木監督が脚本も手がけたオリジナル作品だ。
登壇した櫻木監督は「今の自分の年代でしから作れない作品をと考えました。その中で、日本は70年以上戦争が起きておらず、若者の戦争に対する免疫が弱まっている一方で、またいつ戦争が起きてもおかしくないなという状況が来ている。彼らが“その時”に直面したらどうするのか。何を守るのか。若者を代表する主人公・真を通してシミュレーションしながら物語を考えました」と作品に込めた思いを語った。
同作は海外セールスも好調で、フランスでの公開も決定しているという。本作を選出した映画祭のアートディレクターのマルセル・ジャンも映画祭の公式カタログで「この映画は、科学的真実とその枠組みの中で複雑に入り組んだ物語を巧みにコントロールしながら、驚くほど奥深きキャラクターたちによって世界が構築されている」と高く評価している。
なお、今年は長編コンペティション部門10本のうち、日本から本作のほか、原恵一監督『バースデー・ワンダーランド』、湯浅政明監督『きみと、波にのれたら』の3本が選出されており、さらに審査員の一人には、スタジオポノックの西村義明プロデューサーが務めている。受賞結果は現地時間15日に発表される。(取材・文:中山治美)
第43回アヌシー国際アニメーション映画祭は6月15日(現地時間)まで開催