香取慎吾、ノーメイク映画出演で得た新たな気づき
香取慎吾が白石和彌監督とタッグを組んだ映画『凪待ち』(公開中)。本作で香取は、賭け事から抜け出せず、もがき苦しみ大切なものを失っては後悔する主人公・郁男を好演した。ポスターに写る人生に絶望したかのような俯きがちの視線の香取……。そんな彼の表情に驚きを覚える人も多かったのではないだろうか。
以前香取は「明るく元気な慎吾ちゃん」というパブリックイメージを自覚していると話していた。ただ、当然のことながら、それは香取の一つのイメージであり、彼のすべてではない。芸能界にデビューして以来、常に注目を浴びてきた香取だが「昔からどう見られるかというのは、あまり気にしていないんです」と語る。
その一つのキーワードが“ノーメイク”だという。映画やドラマへの出演はもちろん、歌番組、バラエティー番組など幅広いジャンルで活躍してきた香取。基本的にはメイクをしていたというが、20年に渡ってレギュラーを務めてきた「笑っていいとも!」ではノーメイクだったそうだ。
「なぜなんでしょうね。『笑っていいとも!』ではずっとノーメイクでしたね。髪もセットしていないから、いつも派手な帽子を被っていました。番組を観ていた人はずっと僕のノーメイク姿を見ていたことになります。でもそういう部分を見られることにあまり違和感はないというか、気にしていないです」
そんな香取だが、映画やドラマでは、これまでノーメイクで撮影に臨んだことはなかったという。しかし『凪待ち』では、白石監督の意向もあり、一切メイクをせずに郁男という役柄に挑んだ。「ノーメイクで芝居することが、こんなにもいろいろな部分で影響するとは思ってもいなかった」と初体験に胸が躍ったという。
「メイクをしていると、無意識に手が顔や髪の毛に行きづらい。それがノーメイクだと、自然に顔に手をやったり、髪の毛をかきむしったり……。なにもまとっていないことが、こんなにも自然体でいられるということを知ることができたのは新鮮でした」
「求めてくれる人がいれば、応えたい」と話した香取。白石監督との出会いもそうだが、これまでも阪本順治監督や三池崇史監督、三谷幸喜監督など、エンターテインメント性と作家性を兼ね備えた映画人からのラブコールが続く。「華やかなアイドルとしての香取慎吾の深いところにある黒い部分、そこを引き出したいと言ってくださる方たちなので、僕としてもご一緒させていただくと、とてもエキサイティングなんです」と目を輝かせる。
2017年10月に「新しい地図」として本格始動してから1年8か月。表現者として、さらなる凄みを増している香取の芝居は必見だ。(取材・文:磯部正和)